上浦 健司

コンクリートへの飛来塩分の到達と進入過程の再現試験装置の開発

指導教員:下村 匠

コンクリート構造物の塩害劣化進行予測において最も支配的であるのは、コンクリート表面塩分と拡散係数である。現状のコンクリート構造物における設計法では、コンクリート表面塩分は立地条件のごく一部から、拡散係数はコンクリート配合の一部から、それぞれが一定値として算出され、設計に反映されている。しかしながら、コンクリート表面塩分及び拡散係数は、如何なる条件によって決定されるのかは不明瞭であり、また必ずしも一定値をとる必要もない。そのような着眼点のもと、本研究では、人工的に飛来塩分環境を作り出し、既知の環境条件における塩害環境下の飛来塩分とコンクリート表面塩分、コンクリート中への塩分浸透の関係を明らかとすることを長期的目標とし、環境条件が一定に保たれている実験設備を用意し、基礎実験を行った。
まず、気泡による飛沫塩水粒子発生装置を組み込んだ風洞システムにより、コンクリート供試体に塩水粒子が風により飛来する塩害環境を実験室内に再現する試験設備を開発した。その結果、本試験設備での塩害環境は、最大で自然環境の20倍ほどの塩害環境を得うること、2つの卓越形態の異なる塩害環境を再現しうることが確認された。
次に、本試験設備を用いて、各配合、各深度、各飛来塩分量、各暴露期間におけるコンクリート供試体の暴露試験を行った。その結果、本試験設備を用いた実験手法により、表面塩分が供給源となる正常な内部塩分濃度分布を得うること、表面到達塩分量のおおよそ20%が内部への浸透か表面からの脱落によって喪失していること、表面到達塩分量とコンクリート含有塩分量には相関があること、コンクリート配合とコンクリート含有塩分量に相関があることが確認された。
最後に、全暴露試験情報を整理して、boltzmann変換の導入と各値の予測を、予備実験を含み行った。その結果、boltzmann変換を導入し算出された拡散係数の予測値は、当該位置でのコンクリート含有塩分量と相関があり、コンクリート含有塩分量が多いほど、拡散係数の値が小さくなること、boltzmann変換を導入して算出された拡散係数の予測値、及び表面塩分量は供試体水セメント比に相関があり、水セメント比が大きいほど、拡散係数も大きくなることが明らかとなった。
また、本研究により、表面塩分の脱落原因がない場合、コンクリート表面塩分が何時如何にして飽和域に到達するのかが判明せず、課題として残された。

前のページに戻るには"戻るボタン"で戻ってください。