建設構造研究室 長井雅人
合成ハイブリッド桁設計法の開発研究
指導教官 長井正嗣
近年,橋建設事業のコスト縮減対応として,非常にシンプルな構造形態の鋼少数主桁橋の開発が行われ,経済性達成の観点から建設数が非常に多くなっている.最近では,更なるコスト縮減方策が求められ,限界状態設計法の導入が検討されている.ここでは,更なるコスト縮減の可能性を探るため,センタースパン80,100mの3径間連続合成桁モデルを対象に,許容応力度設計法(ASD),限界状態設計法(LSD)の2つの設計法をベースとし,ノン・ハイブリッド桁,ハイブリッド桁の比較・考察を行い,ハイブリッド桁導入の効果について検討を行った.
ハイブリッド桁の発想は,ウェブの主たる目的がせん断に抵抗することに着目し,鋼桁断面内のウェブに低強度材の適用,つまり相対的に低コストの鋼材を適用してコスト縮減を図ろうというものである.
曲げ終局強度についてハイブリッド桁とノン・ハイブリッド桁間の差異の検討を行った.正曲げ部では,ハイブリッド桁の強度はノン・ハイブリッド桁に比べて5〜15%の低減が生じる.しかし,正曲げ部は一般に,使用限界状態で断面決定されるため,この差の影響をあまり受けない.負曲げ部は,逆に,終局曲げ強度で断面決定されるが,曲げ強度に差異はほとんど生じていないため影響を受けない.
総断面積の比較を行う.スパン80m,径間部(正曲げ)では,LSDを適用することでASDに対して断面積を約20%小さく設計できる.一方,ハイブリッド桁の場合,ウェブに低強度鋼材を使うため,約10%程度の低減となります.いずれもASDに比べて断面積が小さくできる.スパン80m,中間支点位置断面(負曲げ)の場合,ASD,LSD(ハイブリッド,ノンハイブリッド)いずれも同一断面となる.この理由は,いずれのケースも終局限界状態で断面が決定されることと中間支点位置の抵抗断面は[鋼桁 + 鉄筋]断面でその最大強度が降伏モーメントとなるためである.
次に,鋼材単価を考慮した換算断面積の比較を行う.最新の物価版による数値では,S450 : S355の鋼材料の単価比率として1.25~1.30 : 1.00とされている.これより,S450 : S355を1.25:1.0と仮定して比較検討した.ハイブリッド桁の正曲げ部の鋼材費用は96〜98%に縮減,負曲げ部では,92〜94%に縮減した.橋全体で考えると5,6%程度縮減できる.
以上のことから判断すると,合成桁をハイブリッド化するメリットは大きいと言える.また,ハイブリッド化に際し,許容応力度設計法から限界状態設計法への以降は欠かせないものである.
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