小島 靖弘

飛来塩分の現地計測と橋梁断面周辺での分布特性の推定に関する研究

岩崎 英治

近年の国際化の流れおよび厳しい経済状況の中で,我が国橋梁建設は,自分の橋梁を建設するのみならず海外の橋梁を建設する時代に入っており,十分な国際競争力が必要になっている.鋼橋の初期建設費はコンクリート橋に比べると割高になっている.しかし,いわゆる合理化鋼橋はコンクリート橋に比べて十分な競争力を持っている.鋼材の欠点は腐食することであり,この鋼材の腐食を防ぐために鋼橋では定期的な塗装が必要とされている.この定期的なメンテナンスのライフサイクルコスト(LCC)を押し上げる要因となっている.こうした中で,耐候性鋼材は無塗装で使用できるために,LCC低減の観点において大変魅力的な鋼材であるといえる.耐候性鋼材の使用には1年間飛来塩分量を測定し,0.05mdd以内であれば耐候性鋼材を使用してよいとされている.しかし,飛来塩分量は年間を通じて変化するため,測定には多大な労力と時間が必要になる.そのため,離岸距離が十分な地域では調査を省略してよいとされたが,太平洋に面した地域では離岸距離2km以上であるのに対し,北陸以北の日本海に面した地域では離岸距離20km以上となっている.これでは,新潟県内のほとんどの平野部が調査対象地域となってしまい、耐候性橋梁建設の大きな障害となっている.また,過去の調査結果から,橋梁周辺環境によって腐食状態に違いがあることがわかっている.
 飛来塩分の測定方法は数種類ある.日本で多用されているドライガーゼ法と土研式タンク法では,捕集面を飛来塩分の卓越方向に向けて計測する必要があり,卓越方向と捕集面の方向が異なっていると,計測された飛来塩分量と実際の飛来塩分量が異なっている懸念がある.
そこで本研究では、飛来塩分の測定方法について,従来の測定方法の設置方向による測定値への影響と,設置方向に依存しない測定方法の検討を行なう.さらに,数値シミュレーションにより,橋梁各部位の飛来塩分量及び腐食量の推定を行なうことにより,腐食環境の厳しい部位を把握して維持管理に役立てるものである.ここでは,数値シミュレーションによる風の流れの再現に関する検討と,実橋での飛来塩分の計測量の比較検討を行なう.
 本研究における知見を述べる。飛来塩分の計測方法について、土研式タンク法による全方向捕集器具を用いて観測を行なった結果,飛来塩分量の増減の傾向をつかめているため,これによって計測が可能であることがわかった。また、全方向捕集器具の設置地点の塩分の飛来する方向を考慮すれば,観測地点の風向風速を知ることにより,卓越方向の日平均飛来塩分量を推定することが可能であることがわかった.数値シミュレーションでは、桁下に一定以上の空間があれば桁内の風の流れが再現されることがわかった.一方で,桁下空間が桁高さの1/3の高さの以下の場合,桁内の風の流れが再現されない場合が多いことがわかった。また、桁周辺の飛来塩分の解析を行なった結果,橋上や桁下において再現されていることがわかった.また,桁内では飛来塩分量の累積値の取得方法によって実測値と差が出ることもわかった.

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