浅野幸士

耐候性鋼橋梁の腐食環境と腐食減耗量に関する研究

岩崎英治

近年,ライフサイクルコスト低減が橋梁についても重要な課題となっており,耐候性鋼材を用いた橋梁が多く建設されてきた.耐候性鋼材は,適切な計画,設計,施工を行えば無塗装のまま長期間に渡り優れた防食性を有する鋼材である.現在,耐候性鋼材の適用範囲は,飛来塩分が0.05mdd(mg/dm2/day)以下地域となっている.飛来塩分量の調査には1年の期間を有することから,全国の海岸を5つに区分けをし,地域内で飛来塩分量調査を行わなくてもよい離岸距離が示されている.
耐候性鋼材を用いた既設橋梁において,部位や位置により腐食の状況が異なっている.耐候性鋼材の腐食の因子として主に上げられるのは,海岸の波飛沫より発生する飛来塩分が一番の要因であると言われているが,桁内の空気中の湿度と鋼材表面の温度差による結露や鋼材表面に付着した塩分の潮解による結露といったぬれも腐食因子として上げることができる.
そこで,本研究は新設橋梁の腐食予測システムの構築のために,新潟県内の既設鋼橋において,腐食環境調査と腐食減耗量調査を行い,腐食と腐食因子の関係を明らかにすることを目的とする.
腐食環境調査では,桁の複数箇所に温湿度計と鋼表面温度計,桁内の複数箇所にACMセンサ,桁内側においてガーゼ法を高欄外側に土研式タンク法を用いた飛来塩分の測定を1年間行った.腐食減耗量調査では,ワッペン試験片調査と暴露試験片調査を行った.
本研究における知見を述べる.(1)腐食環境調査では飛来塩分,付着塩分,ACMセンサを用いた腐食速度,温湿度,鋼表面温度の調査を行い,桁内の部位による腐食の違いを見ることができた.(2)桁内のウェブ上とウェブ下において,ACMセンサの腐食電気量と,ガーゼ法による飛来塩分量と年間の腐食速度の関係を示した.(3)飛来塩分量がほぼ同じ内桁のウェブ上とウェブ下において腐食速度に差がみられ,飛来塩分以外の腐食要因が影響していることがわかった.(4)既往の研究と同様にISOによるぬれ時間とACMセンサにおけるぬれ時間は異なることを確認できた.(5)腐食減耗量調査を行い,さび厚,板厚減少量および腐食減耗量予測をした.(6)小型曝露試験片においては,上面より下面のほうが腐食が遅れることが分かった.(7)2年間曝露したワッペン試験片から求めた,腐食速度パラメータBSMAは,小型曝露試験片による従来の予測法では異なることを指摘した.

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