ken08405

阪東　聖人

異方圧密された粘性土の変形係数と測定手法に関する研究

豊田　浩史

実地盤に現われるひずみは破壊まで考えると数十%程度まで存在するが，地盤や土構造物の地震応答解析や振動解析，地盤の各種の静的な荷重に対する多くの変形問題の解析には，10-6から10-3程度までの微小ひずみ領域における変形係数と減衰係数が必要となる．また，実地盤においては異方圧密状態で存在する地盤がほとんどであることが知られている．
これらの微小ひずみ領域の変形係数は原位置での弾性波探査試験により求めるのが一般的であるが，あるひずみ・応力レベルでの地盤物性値しか得られないという欠点がある．そのため，境界条件が明確で比較的実施が用意である三軸試験を行い，地盤の変形係数のひずみレベル依存性や圧力レベル依存性に関する研究が行われてきた．測定法については，静的載荷法や振動試験法は実績があるものの，統一的な試験法とはなっておらず，導入が簡便で安価な波動伝播法のベンダーエレメント試験(以後，BE試験と称す)が普及しつつある．
そこで本研究では，異方圧密された粘性土の微小ひずみ領域における変形係数測定を目的として試験を行った．また，局所ひずみ測定試験，BE試験を実施し，両者の比較から微小ひずみ領域における変形係数の測定手法について検討する．
本研究により得られた知見を以下に示す．
① 有効拘束圧，排水条件，圧密条件に関わらず，微小ひずみ領域における粘性土の変形係数は圧密時間の影響を受け，圧密時間の増加とともに大きくなる．その増加は，圧密時間が長くなるに従い小さくなる．
② 短い圧密時間において，局所ひずみ測定試験で求まる変形係数は，BE試験で求まる変形係数より小さい．
③ 本研究で用いた粘性土の有効拘束圧300kPa時の3t法による圧密終了時間は6.1時間程度であるが(有効拘束圧150kPa時は3.1時間)，局所ひずみ測定試験，及びBE試験より求まる変形係数の値が落ち着くには，24時間程度の圧密時間が必要である．
④ 粘性土におけるBE試験の適用において砂質土でも推奨されているように，入力波条件として，周波数10，15，20kHzの1波のsin波，伝播時間の同定法はT.D.法のstart-to-startを適用した．
⑤ 局所ひずみ測定試験の結果から，微小ひずみ領域での変形係数は，K値の影響を受け，K値が小さくなるほど，ヤング率，及びせん断弾性係数も小さくなる．BE試験においては，K値の影響は小さい．
⑥ K値が大きくなると，局所ひずみ測定試験に比べてBE試験により求まるせん断弾性係数は大きな値を示す．
今後の検討課題としては，有効拘束圧を変化させ，柔らかい供試体や硬い供試体においても同様の傾向を示すか調べていく．

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