中村 幸太朗

礫含有量を考慮した幅広い粒径を含む埋立土の液状化評価手法

豊田 浩史

1995年に発生した兵庫県南部地震では,礫分を含んだまさ土の埋立地盤でも液状化したことが明らかになった.このような礫質土地盤は均等係数が大きく,乾燥密度が砂に比べて大きいことなどから液状化しにくいと地盤として分類され,液状化の検討対象から除外されてきた経緯がある.まさ土の液状化は,現行の液状化判定法の再検討を促すものとなっており,液状化に関する研究が再度活発に行われるようになった.しかし,既に多くの研究が行われ液状化特性の解明が進められてきた砂質土に比べ,粒径分布が広く,礫分まで含んだ土に関しては未だ未解明の部分が多いため,このような地盤の液状化強度特性を解明することは非常に重要である.
本研究では,近年施工された和歌山県有田郡広川町沿岸域を埋め立てることによって造成された地区を対象として,現地調査を行い埋立地盤の特性を調べる.また,実際に埋立工事に使用された粒径分布の広い,礫分を含んだ土試料を用いた各種室内試験を実施し,強度・変形特性および液状化強度特性を求める.そして,現地調査および室内試験の結果を総合的に考察し,埋立土の液状化評価を行う.
本研究で得られた結果を以下に示す.
1) 粒径の揃った砂では,供試体作製時の締固めにより密度を大きく変化させることができ,この密度が液状化強度に大きな影響を及ぼすが,細粒分を多く含む土においては,供試体作製時の締固めより,飽和と圧密により密度が大きく支配される.つまり,細粒分を多く含む土の締固め管理は,液状化防止より,圧密沈下抑制効果が強い.
2) 礫分を含む幅広い粒径をもつ土において,乾燥密度が同じ供試体では,礫分とそれ以外で分級構造をつけると,液状化強度は少し小さくなる.これは,細粒分の粘着成分が無くなることにより,液状化強度が低下したためと考えられる.実際の埋立地盤においても分級は起こりやすいため,この影響は十分考慮しておく必要がある.
3) 幅広い粒径をもつ土において礫分が質量で20%程度まで増えても液状化強度はそれほど変化しない.
4) 礫を多く含む地盤において原位置試験を行う場合,礫の存在により貫入抵抗値は大きくなるが,必ずしも液状化抵抗が増加するとは言えない.
5) 広川土のように粒径分布が広い土においては,D50の値は小さくなってしまうが,貫入抵抗は礫分とともに確実に増加するため,礫質土としての判定が妥当であるとする結果を示した.したがって,道路橋示方書における礫質土の判定基準として,D50での判定の他に,礫含有量による規定を設けることが必要であると考えられる.

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