吉田 航

新潟西港における投棄された浚渫投入土砂の移動に関する研究

細山田 得三

新潟西港は信濃川の河口内部に位置する港であり、交通および経済活動を支える拠点として新潟市の発展に寄与してきた。信濃川は絶えず上流から泥や粘土を主体とした土砂を輸送し、それが河床上に堆積することによって新潟西港の水深が浅くなる、いわゆる航路埋没の問題が顕著である。このため、新潟西港では一年間の総浚渫土砂量は約80万?となっており、そのうち65万?の土砂が海洋投入されている。この浚渫量はわが国の港湾の中でも突出して高いものとなっている。浚渫土砂の投入海域である、新潟西港沖では、海域の海底に土砂が堆積し、徐々に水深が浅くなっており、その環境因子の特性や波・流れによる移動などが高い関心を集めている。
この現状を踏まえ本研究では、過去から現在までの浚渫海洋投入海域における土砂の移動による地形変化を調査することを目的とした。調査海域は現在浚渫土砂を投入している海域と現時点で確認できる過去に土砂投入を実施していた海域、そして海洋投入海域の周辺海域である。
解析期間は平成13年度から平成20年度までとして、新潟西港測量図の標高データをデジタイズし、作成したアニメーションにより移動傾向を調査した。その結果、土砂の投入による堆積での地形変化は確認できたが、波の影響による土砂の一方向の移動は確認できなかった。過去の投入海域での堆積土砂の頂点の水深を年度別で比較すると、徐々に水深を取り戻していることが確認できた。したがって、新潟西港沖の浚渫投入により堆積した土砂は、波の影響は受けずに、水深の深い方へと移動していることが考えられる。この地形変化の傾向は拡散方程式の挙動と合致し、適当な拡散係数を与えることによって堆積土砂の移動傾向が予測できることが示された。

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