前田 祥吾

カンボジア沿岸域の流動機構の把握

細山田 得三

現在,カンボジア国内では急速に開発が進められており,GDPの成長率は10%を超えるほどである.沿岸域もその例外ではなく,大規模な開発が計画されているが,カンボジア沿岸域はタイ湾に面しており,万が一カンボジア沿岸域で負荷源が発生した場合,カンボジア沿岸域での環境の変化はタイ湾全体へと影響を与えることが予想される.こういった事態を未然に防ぐために近年では大規模開発の際は環境アセスメントが行われるようになってきているが,カンボジアでは現在まで環境アセスメントは行われていなかった.しかし,カンボジア沿岸域での環境の変化はタイ湾全体へと影響を与えると思われるので,カンボジア沿岸域で開発を行う際は,広範囲での環境アセスメントを行う必要があると考えられる.しかし,環境アセスメントを行う際にはその領域での流動機構を把握しておく必要があるが,カンボジア沿岸域やタイ湾の流動機構は解明されていないのが現状である.よって本研究では,カンボジア沿岸域の開発によるタイ湾全域の環境への影響,並びにタイ湾及びカンボジア沿岸域の流動機構を把握するために,カンボジア沿岸域,及びタイ湾全体の流動機構を把握することを目的とし,2次元数値モデルを用いて潮汐流,及び吹送流の解析を行った結果,以下の結論を得た.

強制水位としてNAO.99bを用いることにより,潮汐調和定数を入手できない海域においても,詳細な潮汐流シミュレーションを行うことが可能となった.タイ湾では,潮汐流は時計回りの循環流を形成し,カンボジア沿岸域の南側,及びSihanoukvilleの西側を通して海水交換を行っていることを解明した.カンボジア沿岸域,及びSihanoukville付近の平均濃度の時間変動を求めたことにより,両海域では計算開始後13日で濃度が半減し,半年後にはほとんど海水交換が完了していることを解明した.タイ湾においては,吹送流の影響は潮汐流と比較して小さく,吹送流がタイ湾に与える影響は小さいことを確認した.カンボジア沿岸域内の潮汐流を解析した結果,Kaebで流速のピークが3つ現れる,約70×50kmの領域内の左右で流況が大きく異なるなど,複雑な挙動を示すことを解明した.thmei,Kaeb,Angkorの3点で拡散計算を行うことにより,Thmei,Kaebは比較的海水交換性が高く,Angkorは非常に停滞性の強い海域であることを確認した.

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