野崎 万利子

洪水流による土砂輸送と地盤標高変化の解析

細山田 得三

近年,日本では激しい日降水量による水害が頻繁に発生している.特に2004年は10個の台風の上陸や集中豪雨など自然災害が多発し記録的な年だったといわれており,集中豪雨によって中小河川では多くの洪水が生じ水害が多発した.新潟県中越地方では2004年7月12日夜から13日にかけて,梅雨前線の活動が活発化し強い雨雲が流れ込んできた.そのため13日朝から昼頃にかけて新潟県中越地方の長岡地域,三条地域を中心に狭い範囲で豪雨が発生した.この豪雨により三条市を流れる五十嵐川や見附市・中之島町を流れる刈谷田川などで短時間に急激に水位が上昇し,新潟県内では6つの中小河川の堤防が11箇所決壊した.特に中之島町の今町大橋下流左岸では13日13時頃に約50mわたって激しく決壊し,家屋の倒壊,浸水による被害が甚大であった.また中之島町では刈谷田川左岸の破堤に伴い広い範囲に土砂が流出し,地域住民は土砂の片付けに困難な状況となるなど,土砂堆積による大きな被害を受けた.洪水のみならずそれによって輸送される土砂の動きの重要性が認識された.
このような背景から,本研究では洪水波のメカニズムおよび洪水によって輸送される土砂の運動を把握することを目的として,非定常流の二次元数値波動モデルと不均等な土砂輸送を予測するモデルを開発した.研究対象は新潟豪雨による氾濫域の中でも浸水被害が大きく,家屋倒壊が顕著であり,さらに土砂堆積による大きな被害を受けた中之島町を流れる刈谷田川とした.数値モデルは有限差分法であり,計算格子は直交格子とした.変数の配置はスタガード格子とした.また,本モデルを用いて刈谷田川における土砂堆積や侵食の進行,土砂輸送による地盤標高の変化などを予測し,洪水時に河川から供給される土砂の動態を把握した.既往のモデルでは破堤点から洪水流を発生させていたのに対し,本モデルでは河道内部より洪水流を発生させ計算を行った.さらに中之島町の今町大橋下流左岸の破堤点に焦点を置き,越流による堤防の侵食および破堤に至る過程を数値計算に組み込んだ.
その結果,刈谷田川の破堤を表現し,土砂輸送による侵食や土砂堆積が発生することで地盤標高が変化することを確認した.計算の妥当性を示す根拠としては最大水位および土砂の堆積高のみであるが,十分合致しているものではなかった.計算は格子平均,観測は1点であるため,単純には比較できないが,定性的には現時点では満足できるものであった.

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