永田 隆広

中間土で構成された盛土構造物の耐震安定性に関する振動台模型実験

大塚 悟
 2004年に発生した中越地震の際,長岡市の高町団地は大規模な盛土の斜面崩壊被害を受けた.中越地震は地震発生前の台風23号による地下水位の上昇と地震の複合災害とされている.過去の研究において,高町団地の盛土崩壊地の試料を採取し三軸試験を行ったところ,砂と粘土の両特性を有する中間土であることがわかった.また,この結果に基づいて逆算水平震度を求めた結果,盛土内の浸透水位の位置で安全率が異なった.浸透水位が低い場合にも,地山と盛土の境界層が飽和化していれば盛土が崩壊した可能性が高い.これまでに,水の浸透が盛土の耐震性に及ぼす影響について検討した事例は多いが,細粒分を多く含んだ地盤材料を用いた盛土の崩壊機構を研究した事例は少ない.本研究では,中間土における盛土崩壊メカニズムの把握に焦点をあて,斜面崩壊を引き起こす要因として盛土内の浸透水の存在に着目し,地盤内の水位が低い場合,高い場合の盛土崩壊メカニズムの相違について,振動台実験を用いて検証した.
 また,飽和・不飽和浸透流解析と剛塑性有限要素法による安定解析の連成解析にて,模型地盤内部の水位線,実験で得られたすべり面の形態や盛土斜面の崩壊挙動を表現しようと考えた.
 振動台模型実験結果から,水位の高い場合は,水圧の上昇によるせん断耐力の低下が大きく,特に,のり尻部の有効応力が大きく低下することにより,盛土を支えていた,のり尻部が流出して大崩壊する.対策工がある場合も同等の結果となる.水位の低い場合は,地表面に近い箇所で急増した応答加速度が盛土に生じ続けることで,盛土天端に亀裂が発生する.さらに,水平力,地震力が亀裂を進展させ,崩壊へと至る.また,すべり線は水位上で形成される.対策工がある場合,崩壊因子である地表面付近の急増する外力を抑制する一方で,盛土内に水位が溜まり盛土全体の有効応力が水圧の上昇を受けて低下し,水圧の上昇によるせん断耐力の低下が大きくなる.盛土天端付近に対策工を配置することで,対策工の持つ引張力により,亀裂の進展や応答加速度の増加を抑制することができる.また,盛土内の水位を排水することでさらに盛土の崩壊を抑制できることが予想される.

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