瀬谷尭

Superpave配合設計を我が国の空港舗装に適用するための基礎的研究

高橋修

近年,航空需要の増加により空港舗装の長寿命化が必要とされている.航空機の離着陸の回数が増えることによって,通常10年の設計寿命を待たずに,早期にアスファルト舗装が破壊にいたる状況が散見されている.その影響により,補修の頻度が多くなって維持管理費も増加している.そのため,より耐久性の高い空港アスファルト舗装の設計法,施工法が必要とされている.
道路舗装においても空港舗装においても,我が国のアスファルト混合物は,マーシャル設計法によって配合設計が行われている.我が国での基準を含め,現行のマーシャル設計法は長い歴史による豊富な実績に裏付けられた有効な配合設計法といえる.しかしながら,原材料の多様化や載荷条件の重交通化に対応するための,柔軟性と合理性が不十分であると指摘されている.これに対し,米国,カナダでは重交通に対して耐久性の高い合理的な道路用の配合設計としてSuperpave設計法を開発した.Superpave設計法は,この10年間で米国,カナダはもとより,欧州,アジアの先進諸国でも採用されている.米国では,道路舗装への実用化がほぼ完了し,現在空港舗装への適用拡大が検討されている.
本研究では,我が国の空港,特に東京国際空港の破損形態の実状を踏まえた上で,塑性流動抵抗性に優れたアスファルト混合物の配合設計法について検討した.本研究の目的は,諸外国の道路舗装で実績のあるSuperpave設計法を,わが国の空港舗装に導入するための仕様を決定して,Superpave設計法の適用性を評価するとともに,設計基準の見直しを含めたガイドライン策定のための基礎データを得ることである.
まず,東京国際空港と関西国際空港で使用されている原材料の仕様と実際の締め固まり状況を調査した.そして,それらと同等の原材料を使用した締固め試験を行って,配合設計時の供試体締固め条件を設定した.すなわち,供用過程でのアスコンの締固まり状況を再現するSuperpave Gyratory Compactor (SGC) の仕様となる設計旋回数Ndesを選定した.そして,Superpave設計法の規定と我が国の空港舗装の規定に基づいていくつかの骨材粒度を設定し,Superpave設計法の手続きに基づいてアスファルト混合物の配合設計を行った.ここで設計したアスファルト混合物の物性を現行のマーシャル設計法で設計したものと比較し,Superpave設計法の適用性と設計基準の妥当性を評価した.
検討の結果,Superpave設計法によると塑性流動抵抗性に優れたアスファルト混合物を設計することができ,空港アスファルト舗装の,特に誘導路への適用性が高いことを明らかにした.また,高温多湿という我が国の気象条件を考慮して,空港アスファルト舗装にSuperpave設計法を適用するための見直すべき設計基準類について具体的な知見を得ることができた.

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