kan08807

今野　宏樹

線引き導入による開発の実態とその問題点に関する研究

中出文平・樋口秀・松川　寿也

1968年の都市計画法公布に伴い、区域区分制度が制定された。この制度は大都市圏での適用に重点を置いたものであり、結果的に地方を中心に非線引き都市計画区域が広く存在し、地方都市とその郊外農村地域では、線引き都市計画区域とそれ以外の区域が併存することとなった。こうした中で、近年、適切な土地利用を図る等の観点から、線引きを導入した自治体として鶴岡市などが挙げられる。しかし、新規に線引きを導入したものの、その後の開発許可制度等の運用次第では無秩序な開発が行われる可能性がある。
本研究では、人口10万人を超えたことから1996年10月に線引きを導入し10年以上が経過して、線引き後の課題やその影響を十分に検証できる岐阜県多治見市と、人口規模が同規模でありながら、その北部に隣接する非線引き都市の可児市を対象に、過去の開発動向を詳細に分析し、個々の開発・建築許可の許可基準の適用状況、既存宅地制度の定量的かつ即地的運用状況等を明らかにした上で、その後の線引き後の関連施策である、3411区域指定への影響を把握した。これらから、区域区分制度の適用がもたらす都市施設整備・土地利用施策への影響を明らかにした。
市街化調整区域に隣接する非線引き白地地域では、①位置指定道路を伴う林地開発、②旧国道248号線沿道の商業開発、③農振除外を伴う開発、④農振白地での開発が集中して起きていることがわかった。
また、市街化調整区域指定後の開発は、指定による一定の効果はあるものの、線引き直前の駆け込み農地転用や林地転用により、一旦宅地化すれば、線引き後の開発行為等が既存宅地制度、既存の権利による開発の他、既存宅地制度廃止後の経過措置による自己用の建築物並びに、既存宅地制度を踏襲する岐阜県開発審査会提案基準17号・18号により第一種中高層住居専用地域並みの建築物の立地が許容され、さらに、2008年５月17日までは、共同住宅といった市街化調整区域では原則立地できない建築物までもが建築可能となる運用をしていることが明らかとなった。これらの点は、散在した開発が進行し低密度な市街地を形成する要因となり、線引き導入から18年後の2008年６月に施行した3411区域の指定に影響を与え、条例区域から外れた事例を確認できた。
線引き導入は、広域的連続性を持った形で、同時線引きによる土地利用規制によるコントロールが望ましい上、線引きと同時の調整区域地区計画の適用や調整方針に基づく3411区域指定等、早期の開発誘導施策の導入が必要である。さらに、ゾーニング毎に許容できる開発フレーム、つまりは、既存の開発メニューで許容できる用途毎に地域に即した面積ベースでのフレーム設定が必要であると考える。

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