金内 惇

地方圏の圏域構造における中小都市の圏域中心としての役割について

中出文平・樋口秀・松川 寿也

わが国は、高度経済成長に伴う大都市圏への人口集中及び都市の拡大から、様々な都市問題を引き起こしてきた。この対策として国は、全国総合開発計画をはじめ、様々な取り組みを行なってきた。そして、平成12年の新法改正での地方分権の推進を嚆矢として全国的に地方都市の位置づけが見直された。一方で地方都市の圏域をみると、モータリゼーションの近年での更なる進展等により、その構造は変化している。
こういった状況の中で、地域発展の核として圏域中心の役割を担う地方中枢・中核都市以外に、圏域中心となっている地方中小都市が多数存在している。圏域を構成する上で圏域中心となる地方中小都市は必要不可欠な存在であり、これらの圏域中心都市が衰退すると、その周辺市町村も衰退してしまう恐れがある。本研究は、地方中小都市が圏域中心となる地方圏域に着目し、その圏域を都市的要因・機能から設定し、中心都市と周辺市町村の地域間の繋がりから、圏域の実状及び圏域構造を明確化することで、圏域中心都市の役割と周辺市市町村との在り方について提言することを目的とする。
本研究は、東北6県と新潟県を対象地域として、資料及び統計データから、人口及び諸機能の集積といった都市機能面と、山脈の標高や都市の位置関係といった地形面から、対象圏域中心都市として、秋田県能代市、山形県新庄市、新潟県村上市を選定した。そして、教育・雇用・買物・医療面で、周辺市町村から対象圏域中心都市へ流入している人口割合から、対象である圏域中心都市を必要としている周辺市町村を抽出し、本研究の対象となる圏域を設定した。その上で、設定圏域内の市町村へヒアリング調査及び資料収集を行ない、ヒアリング調査では、既存圏域の背景及びメリット・デメリット、圏域内外の広域連携(広域行政)、圏域中心都市の役割及び必要性を把握した。収集資料からは、圏域構成市町村独自の計画、既存圏域内での役割、道路網整備及び高校数の推移を把握し、圏域の実状及び構造変化を明らかにした。
その結果、本研究で取り上げた3事例では、圏域構造の実状として、地理・歴史面での繋がりが強く、圏域中心都市を中心に地域住民の生活が成り立っていることが分かった。その一方で、一部の圏域内連携事業では、各市町村の持つ事業の方向性や取り組み方の違いから、広域行政面での問題を抱えている。又、モータリゼーションの進展に伴い、地域住民の雇用や買物等の行動範囲が拡大傾向にあり、圏域中心都市の必要性が薄れつつあることが分かった。
これら調査・分析の結果を経て、本研究では圏域中心都市の役割と周辺自治体との今後のあり方を提言した。

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