大川秀和
開発許可条例の運用形態とその要因に関する研究
中出文平・松川 寿也・樋口秀
S43年の新都市計画法制定により導入された開発許可制度は、制定後30年以上経過する中で、都市を取り巻く環境に大きな変化が生じたため、平成13年の改正都市計画法の施行によって見直された。この改正により、既存宅地制度が廃止となる一方で、地方分権の流れに沿い、地域の実情に合わせられるように、市街化調整区域における開発許可立地基準を都道府県等が条例で設定し、それに適応するものを許可対象とする事が可能となった(3411条例)。しかし、市街化調整区域に一定規模の開発区域を設けることから、運用次第では、無秩序な開発が行われる危険性を有するという課題もある。
本研究では、H19年8月現在で都市計法第34条11号の規定に基づき条例を制定、全自治体の運用形態を例規集とアンケート調査から把握し、既存宅地制度と3411条例の運用形態の相違から類型化を行い、5タイプに分類した。そのうち、強化型から山形市、富山市、緩和型から羽生市、長岡市、下関市の、2タイプ5都市を詳細研究都市とした。そして、5都市の運用形態の要因を、3411条例制定の目的や制定経緯、既存宅地制度との関連性、農振法等の土地利用上の法制度との関係から明らかにした。さらに、3411条例を運用するにあたり問題となる点を整理し、まとめた。
3411条例導入の目的は、市街化調整区域に広がる既存集落の維持、活性化とされているため、山形市を除く4自治体では、区域を大きくとりたいという考えが運用形態に反映されている。そのため、羽生市では他の計画との不整合が生じる恐れがある事、開発規制が全くない区域を生みだした事、を問題として指摘した。
逆に、富山市では、全集落を対象に柔軟な運用形態をとったが、本来はこの条例区域から除外すべき区域を包含しているという指摘を受けて区域見直しが行われ、限定的な運用となっている事が明らかとなった。また、長岡市も同様に区域を過大に設定しているが、開発許可対象を条例施行日以前からの宅地である土地と限定しているため、無秩序な開発等の問題が生じる恐れは少ないと考えられる。
山形市では、当初の運用形態が他自治体と比べて厳しく、実際の運用でも、3411条例区域を限定的に図示し、厳しく運用していた。その区域内の土地利用の検討からも、農地等をなるべく除外する区域設定を行っていた事を確認できた。また下関市についても、柔軟な運用に対して、平地が少ないという地理的要因から市街化区域に近い位置での開発となるため、問題が生じる恐れがない事を確認できた。
以上の結果より、3411条例導入の際には、既存集落の特定や限定的な指定、措置を講ずる事で、問題となる区域内の無秩序な開発を抑制できると考えられる。
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