三瓶 真幸

車両感知器データを用いた時間帯OD交通量予測−ミクロ交通シミュレーションによるアプローチ−

佐野 可寸志  松本 昌二  土屋 哲

 近年,交通施策を評価するために,ミクロ交通シミュレーションを用いた研究が行われている.ミクロ交通シミュレーションを実行するためには,細かい集計幅やゾーン単位のOD交通量が必要である.現状では公的機関でOD表が作成されているが,集計幅が広いため,ミクロ交通シミュレーションに適用することができない.一方,車両感知器は主に都市部のみであるが,約200m〜1km程度の間隔で設置されており,短い集計幅で交通量などのデータを取得していることから,このデータを用いれば,時間帯別の詳細なOD交通量を推計できると考えた.そこで,本研究では都市部に設置されている車両感知器により観測された交通量(観測リンク交通量)のデータを用いて,ミクロ交通シミュレーションにより時間帯別(10分毎)のOD交通量を推計する.さらに実際のネットワークに適用し,時間帯別OD交通量の有効性を検証する.
 第1に新潟市のネットワークを作成し,車両感知器データやパーソントリップ調査による発生・集中予測モデル式を用いて,発生・集中交通量を設定し,二重制約型重力モデルによりAM6:00〜8:00の2時間の初期OD交通量を設定した.さらに初期OD交通量を用いて,交通ミクロシミュレーターParamicsを用いてシミュレーションを実行し,シミュレーションリンク交通量とシミュレーションOD交通量を算出した.第2に得られたシミュレーションリンク交通量と観測リンク交通量の誤差を減少させ,シミュレーションリンク交通量を10分毎の時間帯OD交通量に修正するプログラム(時間帯OD交通量推計プログラムを作成した.最後に得られた時間帯OD交通量を使用し再びシミュレーションを行い,リンク交通量,渋滞長,ゾーン間の所要時間を評価指標として評価を行った.
 結果としては,3つの評価指標共に,誤差率は平均で約10%とかなり低かった.既存の研究では誤差率は10%〜30%ほどであるが細街路を含んでいないので,細街路が含まれているネットワークで誤差率が約10%程度になったことは大きな成果といえる.また細街路や内々交通量用のゾーンも考慮してシミュレーションを行ったことから,仮にネットワーク上に渋滞が生じても,抜け道を選択するという地元ドライバーの特性を再現できた.しかし,リンク交通量に関しては,交通量が少ない箇所に限り最大で40%の誤差が生じた.これらのことから,このモデルは交通量が多い箇所には適していることが分かった.よって,このモデルを使用することによって,現在よりも道路交通情報の精度が上がり,交通渋滞が減少すると考えられる.

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