kan08608

氏名：宮下　雅之

論文題目：αオキシ水酸化鉄・アナターゼ型酸化チタン複合粒子の光触媒作用による重金属イオン捕集

指導教員名：佐藤一則

低濃度の溶存Pb(Ⅱ)イオンをより効率的に除去するために、バンドギャップが広く、酸化還元力が強い光触媒材料であるアナターゼ型TiO2粒子表面上へ、溶存重金属イオンに対し、優れた吸着能をもつα-FeOOHを微細粒子吸着体として分散担持させたα-FeOOH-TiO2複合粒子を調製し、溶存重金属イオンとの接触効率を高めることで光触媒作用を最大限に活用し、溶存重金属イオンの除去効果を高めることを目的とした。
Pb(Ⅱ)イオン単成分系における除去実験結果において、α-FeOOH-TiO2複合粒子では光を照射しない場合においても、吸着による高いPb(Ⅱ)イオン除去能を示した。特にα-FeOOHの担持量の少ない試料において、TiO2試薬との単位表面積当たりにおけるPb(Ⅱ)イオン除去量の差は顕著であった。更にα-FeOOH-TiO2複合粒子においてPb(Ⅱ)イオン除去に対し、光照射の優位性が顕著に見られ、光照射除去実験後のα-FeOOH - TiO2複合粒子表面にはPbCO3相の存在を確認した。PbCO3生成メカニズムを、光触媒作用によるPb(Ⅱ)イオンの酸化析出、およびpH緩衝溶液として用いたCH3COOHの酸化分解生成物のCO2による化学反応によって析出したと考察した。3種混合重金属(Cu(Ⅱ)、Pb(Ⅱ)、Zn(Ⅱ))イオン溶液からの除去実験に対して、光照射によってCu(Ⅱ)イオンの除去優先性を確認した。α-FeOOH-TiO2複合粒子において可視光(波長λ＞400 nm)の吸収端が確認されたことから、α-FeOOH-TiO2複合粒子における光触媒作用における照射光波長依存性を、色ガラスフィルターによって光源からの光(波長λ＞200 nm)から特定の波長を遮断したPb(Ⅱ)イオン単成分系からの光照射除去実験により検討したが、Pb(Ⅱ)イオン除去に対し、可視光照射の優位性は現れず、TiO2の吸収特性に従い、紫外光の吸収によって光触媒活性が現れることが確認された。
以上の結果から、α-FeOOH担持によるTiO2の複合化効果は、α-FeOOHのFe(Ⅲ)イオンが光励起反応によって生成された伝導帯電子を捕捉することにより、価電子帯正孔との再結合反応を抑制することで、TiO2の持つ光触媒効果を最大限に高めるメカニズムによって現れるモデルを提案した。

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