村田 洸

改良型小型サンプリング装置を用いた雨天時道路排水の重金属流出負荷の実態評価

小松 俊哉,姫野 修司

ノンポイント汚染として知られる雨天時道路排水は,降雨により発生し,非定常的な流出をするため,正確な実態が掴めていない.道路排水に関する既存の研究では,降雨初期や単独降雨で流出する道路排水を対象としたものが多く,降雨の間,発生する道路排水全量を対象としている研究はほとんどない.
そこで,本研究では,橋梁の上部にある1つの雨水ますに流入した道路排水を降雨開始から降雨終了までの間,分割し,継続的な採水を行うことで,降雨条件や先行無降雨時間に基づいた重金属の濃度特性や流出負荷量の実態把握を行うことを目的とした.
2008年度に用いた採水装置は,道路排水を50分の1にして採水できる仕組みであり,2007年度のものを原形としている.2007年度用いた装置を改良することにより,対応可能な総降雨量と降雨強度が増大しており,より多くの道路排水の採水が可能となった.採水装置は,現場に設置する前に,実験室で分割性能の確認を行い,その後,現場に採水装置を設置した.採水前後には必ず分割性能の確認を行っており,採水前後で装置の分割性能が安定していることを確認している.
採水は2008年4月下旬から2008年11月中旬にかけて行い,この期間中,継続採水に成功したサンプル数は15サンプル(2007年度:N=8)であり,全降雨量979mmに対して,その約22%の 213mm(降雨日数では約44%)の継続的な採水に成功した.同時に雨水の採水も行い,道路排水との比較を行った.道路排水中の重金属類(Cd,Cr,Pb,Zn,Cu)について溶存態を1m以下とし,微粒子を1m〜2000m,懸濁態を2000μm以上として3形態に分類して測定を行った.その結果,以下のような結果が得られた.
まず,雨水と道路排水に含まれる重金属濃度を比較したところ,Cdは道路排水でのみ検出され,他の重金属も雨水に比べ高い濃度で検出された.Cr,Pb,Zn,Cuはそれぞれ雨水より平均で5.7倍,2.9倍,3.4倍,4.7倍高い値で道路排水中に含まれていた.Pbが最も雨水に対する比が低く,Pbは降雨の影響が他の重金属より強いことが示唆された.
道路排水中に含まれる重金属の各形態存在割合では,Pbは微粒子として流出し,Pb以外は懸濁態として多く流出する傾向が確認された.これは,降雨の降り方や先行無降雨時間などの様々な要因が各形態濃度に寄与していることが考えられる.
そして,各重金属の流出負荷量特性では, Pbと各降雨条件(総降雨量と最大降雨強度)との関係において有意な正の相関が確認され,降雨によりPbの単位面積当たりの流出負荷が大きくなることが確認された.自動車の鉛含有製品からのPbの流出は流出時間などに関わらず一定であることが報告されており,降雨中もPbが発生していることが原因であると考えられる.
本研究室では,各地域の特性を把握するために必要な年間流出負荷原単位を算出し,採水地点の特徴を把握した.その結果,Znの流出負荷原単位が最も高く,Znは自動車のタイヤなどに含まれていることから,本地点でも自動車交通の影響が考えられる.
今後は,より多くの道路排水を採水し,2008年度は解明できなかった降雨強度の強い降雨などを含めた流出負荷量の特性を把握し,それらの知見をノンポイント汚染の対策技術として活用していくことが必要である.

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