伊藤 梓

実機スワールを用いた合流式下水道越流水中の形物除去特性の解明と性能評価

姫野 修司, 小松 俊哉

合流式下水道は雨水と汚水を同一の管渠で処理場に導く方式であり,早期に下水道事業に着手した大都市に多く施設され,現在でも下水道処理人口普及率の3割を占めている。この合流式下水道は雨天時に増大する処理場への負荷を抑制するために,公共用水域に未処理下水:CSO(Combined Sewer Overflow)を放流する構造となっている。しかし,CSOにはオイルボール(下水道管内に付着する油の塊)や紙製廃棄物(トイレットペーパーや生理用品等)が含まれることから,放流後の河川や砂浜に残留し,臭気の発生や景観の悪化を招くことから国を挙げて対策技術の開発が進められている。
本研究では動力やメンテナンスを必要としないCSOの対策技術の一つであるスワールに着目した。スワールは,渦流により懸濁水中の固形物を除去する汚濁負荷削減装置である。しかし,既存の研究では地中への埋設や模型装置での過大評価により,その性能評価が十分に行われず,実際に国内で採用された事例は極わずかである。そこで本研究では,実機のスワールを長岡中央浄化センター内に設置し,実際に流入するCSOに含まれる固形物の除去性能を明らかにし,CSO対策技術としての有効性を評価することとした。
はじめに流入流量と遮集流量との関係によって変わる渦の形状に着目し,トイレットペーパーや固形物が引き込まれる様子や,このときの渦の深さを観察した。そして除去性能は流入流量と遮集流量のバランスおよび,適切な遮集流量によって形成されることを推測した。また,模擬夾雑物をスワール内に投入して様々な運転条件から,除去性能が得られる最小の遮集流量が25m3/hrであること証明した。
次に,この運転条件で雨天時に実際に流入するCSO中に含まれる夾雑物を対象に除去性能の評価を行なった。ここでは,スワールの夾雑物の除去性能を明らかにするための指標として,スワールの流入部と遮集部における負荷と濃度を比較する「夾雑物負荷除去率」および「夾雑物濃縮率」の2つの指標を設定した。雨天時における実験の結果,ファーストフラッシュ期間における夾雑物負荷除去率は50〜57%,夾雑物濃縮率は176〜195%であった。この除去性能には流入夾雑物量やスワールの運転条件とは関係性は見られなかったが,捕捉された夾雑物を目視により観察したところ,形あるトイレットペーパーや草木類,沈殿性のある砂分が多く遮集される傾向が確認された。一方,細かいトイレットペーパーなど含水率が非常に高く水と同じ挙動を示すものは除去でない傾向が見られた。しかしながら,CSOには多種多様な夾雑物が含まれており,定量的な評価ができないことから,次に,密度と大きさの異なるプラスチック球を投入し物理的特性が除去性能に与える影響を調査することとした。その結果,浮遊性の固形物に対して高い除去性能を示すことが明らかとなった。
以上より,河川での残留性ある大きなトイレットペーパーおよび高い沈殿性を持つ粒子,浮遊性の固形物がスワールに除去されることを明らかにした。

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