氏名:松永健吾
論文題目:下水処理UASB後段のDHSにおける処理特性および保持汚泥特性の評価
指導教員名:山口隆司 准教授
概要:
本研究は実下水処理UASBの後段に、新規の微生物保持担体であるG3.2タイプのスポンジ担体を用いた散水ろ床型リアクター(DHS)を設置し、外気温による長期連続運転を行った。連続処理実験による処理性能評価より、新規担体によるDHSの適用性を評価した。その結果、最終処理水質はBOD=9 (±7) mg/L、CODcr-total=34 (±17) mg/L、TKN=3 (±3) mg/Lと、高い処理性能を示した。このため、水温10〜28℃の条件下では安定した処理を維持できるといえる。
またDHSの設計指針の確立のため最適容積、最適HRTの検討を行った。その結果、COD除去性能を期待する場合、最適な容積負荷は1.0~1.5 kg-COD/m3-sponge/dayと考えられた。TKN除去性能を期待する場合、最適な容積負荷は0.3~0.4 kg-N/m3-sponge/dayと考えられた。また、CODおよびTKN除去性能を期待する場合、最適HRTは2時間であると考えられた。
本実験ではDHSにおける余剰汚泥発生の高い抑制能力に着目した。既往の知見より、DHSにおける余剰汚泥発生の抑制要因の検証項目として、有機物負荷(F/M)、汚泥の自己酸化活性、微小動物による捕食効果の点に着目した。DHS基軸方向のF/Mは0.1~0.2 g-BOD/g-SS・dayと活性汚泥と同程度で、増殖ポテンシャルは活性汚泥と同程度であることが明らかとなった。すなわちDHSで余剰汚泥が少ないのは、汚泥増殖に対して減容ポテンシャルが高いことが示唆された。自己酸化速度に着目すると、リアクター上部において水温25℃で最大0.18 g-O2/g-VSS・dayとCOD除去速度より高く、汚泥減容化が期待された。15℃以下の環境においては、微小動物による捕食効果が主となると考えられる。定量評価の結果より、DHS保持汚泥中の微小動物は活性汚泥より多様性があることが確認されたが、汚泥あたりの個体数は活性汚泥と比べて著しい差は確認されなかった。
以上、DHSにおける余剰汚泥発生の抑制要因について検討したが、本実験の検討項目以外にもDHSから発生する余剰汚泥量を抑制する要因があるのではないかと考えられた。その1つとして、スポンジ内部の嫌気性微生物による有機物分解の可能性が示唆された。
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