永井寛之
天然ゴム製造工程廃液を対象とした資源回収型水処理システムの開発
山口隆司 准教授
脱タンパク質化天然ゴム製造工程 (DPNR) 廃液は天然ゴムラテックス中のアレルギー性タンパク質を除去する工程から排出される高濃度有機性廃液である.本廃液はゴム分や SDS,タンパク質といった成分を高濃度 (約 100,000 mgCOD / L) に含み,アンモニアなどの窒素源も豊富 (約 3,000 mgN / L) である.そのため未処理のまま環境中に放流された場合には,周辺水域の水質汚濁が懸念される.一方,これらの成分を資源化回収すればゴム資源やエネルギー資源 (メタン) として再利用可能であることがわかってきた.しかしながら,本廃液を適切に処理し,また資源回収を行うシステムはこれまでに確立されていない.またこれまでの研究によって,廃液中に高濃度に存在する SDS がゴムの凝固を妨げ,さらに微生物反応 (メタン発酵など) を阻害することが明らかとなった.そこで本研究ではこの SDS を確実に凝集除去し,同時にゴム回収を行う電解質添加法とその後段の嫌気性処理法を組み合わせた水処理システムを開発した.前段の電解質添加法では電解質中に含まれる陽イオン (Ca2+ など) によって,溶液中で負に帯電している SDS はほぼ完全に凝集し,同時に表面電荷の中和によりゴム分の凝固反応が起こる.後段の嫌気性処理法においては,清澄液中の有機物が嫌気性微生物によって最終的にエネルギー資源であるメタンへと転換される.つまり本システムを適用することにより,前段で SDS の凝集除去とゴム分の凝固回収を行い,後段では有機物除去とメタン回収が可能となる.本研究ではまず基礎的な知見の収集のため,電解質 (塩化カルシウム,CaCl2) による DPNR 廃液の凝固実験を行った.その結果 pH 7.0,添加量 3,930 mgCa2+ / L が最適条件と決定され,この時 SDS の 99% が除去可能,32,800 mgVS / L のゴムが回収できた.また電解質添加法適用後の清澄液を嫌気性バイオリアクターによって連続処理したところ,処理水循環運転 (返送比 2)において,OLR 6.4 kgCOD /m3 / d,HRT 39 hrs の条件下で,COD 除去率 84 %,処理水 COD 1,520 mg / L,BOD 除去率 91%,処理水 BOD 554 mg / L を達成し,同時にメタン回収量 1.2 NL / L / d,メタン転換率 52%を維持可能であった.
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