谷口涼子
UASB-DHS システムによる化学合成樹脂含有廃水の処理
山口隆司
近年工業の発達により、工場から排出される廃水の性質も多様化していると共に、これら廃水に対する確実な処理が求められている。この際の廃水処理は、安価であることが望ましいため、微生物による生物処理が注目されている。
本研究の目的は、化学合成樹脂を含んだ廃水を微生物処理することである。しかし、この化学合成樹脂というのは、生命進化の過程において、ごく近年に登場したものである。そのため、ほとんどの微生物は、化学合成樹脂をエネルギー源として利用する事ができない。よって化学合成樹脂のほとんどは、微生物分解が非常に困難である。
本研究では化学合成樹脂が含まれる廃水として、染色工場から排出される精練工程廃水を対象とした。この廃水には、化学合成樹脂であるPVA [Poly (vinyl alcohol)に加え、でんぷんが含まれている。しかしながら、これらPVAおよびでんぷん含有混合廃水を活性汚泥法で処理を行うと、廃水の処理が上手く行われないといった問題がある。特に、廃水中に含まれるでんぷんの分解は行われるのに対して、PVAの分解は上手く行われない。これは、PVAの分解に数日から数週間要するためである。
そこで本研究では、UASB (Up-flow anaerobic sludge blanket)-DHS(Down-flow hanging sponge : DHS)システムによるPVAの選択的分解を試みた。まず前段UASBリアクターでは、嫌気性微生物により、でんぷんをはじめとする易分解有機物の分解のみが行われる。そして主にPVAが含まれる廃水は、DHSリアクターに供給される。そこで廃水は、DHSリアクター内に存在する微生物によって分解される。この際DHSリアクアー内にPVA分解菌が優先するように、炭酸水素ナトリウムの添加を行い、pHが下がるのを防いだ。
ラボスケールUASB-DHSシステムによる実験結果では、1000mg-CODcr・L-1のでんぷん・PVA混合廃水を18時間で、53 mg-CODcr・L-1まで除去できた。またDHSリアクター内の菌叢を16S rRNA遺伝子に基づき行った結果、PVA分解菌であるsphingopyxis sp.の遺伝子を持つクローンが検出された。
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