吉久真弘
航空レーザスキャナデータと空中写真画像を用いた河道内植生の鉛直分布特性の把握
力丸厚、高橋一義
近年、河道内樹木の高木化や樹林化が、治水上・河川管理上のさまざまな問題を招いており、現状の調査方法では、伐採の優先順位を決定することが困難で、一斉伐採を行うことも費用上困難である。そのため、リモートセンシング技術による、河道内の植生状態の面的・定量的な把握が河道内樹木の管理に有効である。本論文では、航空レーザスキャナデータと空中写真画像データを用いて、河道内植生の三次元分布を解析することで、河道内植生の鉛直分布の特性について把握することを目的とした。
高木林が大規模に繁茂している大手大橋下流から蔵王橋上流の間を対象領域として、航空レーザスキャナデータから作成したDSMとDEM及び空中写真を用いて、植生領域の抽出を行い、河道内の植生分布状態の把握を行った。その結果、水際より堤防側に植生が繁茂しやすく、地盤高の高いところに樹木が生長しやすいことが分かった。
信濃川流域の五辺地区、長生橋右岸側下流地区、上片貝地区を対象領域として、河道内において、植生が三次元的にどの程度遮蔽しているのか把握するため、DSMとDEMを用いて、河道内植生の被覆率を算出した。地盤高と標高という2つの基準で河道内植生の被覆率を算出した。地盤高基準では、地盤高を0mとし河道内植生の植生高の違いによる鉛直分布を、標高基準では、河道内の標高の違いによる鉛直分布を把握することができる。結果、地盤高を基準とした被覆率の算出では、どの地区においても、植生高0m〜1mの被覆率が最大となった。また標高を基準とした被覆率の算出では、どの地区においても、地盤高と同じ高さで、被覆率が高くなる傾向が見られた。
以上の結果から、河道内植生の鉛直分布把握と、河道内植生による河積阻害の可能性を検討した。平均水位から、計画高水位までを1m間隔で分割し、観測点の頻度を集計することで、計画高水位以下の河道内植生の鉛直分布の把握を行った。その結果、過去に伐採のある地区と伐採の経験のない地区に河道内植生の分布特性に差があり、過去に伐採の経験のある地区においては、少なくとも伐採後1年間は河道内樹木伐採の効果が持続するが、伐採後4〜5年経過すると、樹木が点在するようになることが分かった。そのため、伐採跡地を継続的にモニタリングし、河積阻害が再び起きないように監視する必要があると示唆された。
本論文では、航空レーザスキャナデータを用いたことで、河道内植生の鉛直分布を面的に把握することができ、樹林の中心部の鉛直分布も把握することができた。今後は、より精密な情報の取得のため、航空レーザスキャナと地上型レーザスキャナを併用した鉛直分布の把握が望まれる。
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