廣世 航
MODIS観測データを用いた日照特性分布に関する研究
力丸厚、高橋一義
日照条件の空間分布を評価するものとして,全天日射量分布図がある。日射量分布図は太陽エネルギー研究従事者のみならず気象・農業関係者などからも広く望まれている。日射量分布図の作成方法としては,メッシュ気候値を用いたものや,静止気象衛星ひまわり(GMS)の可視画像を用いた技術などがある。GMS可視光画像を用いて全天日射量分布図を作成する場合,GMS画像と地上観測全天日射量の関係から日射量を推定する。GMSセンサの地上分解能は1.25kmであるため,1.25km規模での日射量抽出となる。現在,可視光画像では,地上分解能がより高く多頻度の観測を行っている衛星としてNASAのAquaがある。Aquaに搭載されているMODISセンサは,最高地上分解能が250mである。従って,GMSを利用した場合に比べ,より小規模での日照特性分布推定が期待できる。Aquaは一日の昼と夜に2回の観測を行うが,夜の可視光画像は使えない。従って,衛星画像と全天日射量の対応を調べるには地上観測地点数が多い方が望ましい。全天日射量の観測を行っている気象台や測候所の数に比べ,日照時間を観測しているAMeDAS観測地点数は遥かに多い。そこで,本研究では日照特性として日照時間分布に着目し,MODIS可視光画像とAMeDASの日照時間データの関係から日照時間の空間分布を推定し,日照特性分布を評価した。
対象領域は北信越地方と関東地方を合わせた領域を用いた。対象期間は2006年8月とし,対象領域が全て観測されている20日分の衛星データを用いた。日照時間分布は,雲で覆われている地表面は直射日光を遮るため日照時間が短くなると仮定して推定した。まず,日照時間を観測しているAMeDAS地点を選定した。雲がAMeDAS地点の上空を覆っている割合を評価するものとして被雲率算出領域を設定し,被雲率を算出した。被雲率算出領域は,選定した AMeDAS観測地点を中心に東西6km,南北3kmの大きさでそれぞれ設定した。雲域判別閾値を用いて20日分の被雲率を算出し,20日分の日照時間データとの関係を調べて積算日照時間の推定式を求めた。雲域判別閾値を用いて20日分の衛星画像を積算被雲率画像に変換した。積算被雲率画像を推定式により積算日照時間推定分布図に変換した。そして,積算日照時間の推定分布図から日照分布特性を評価した。検証では,積算日照時間の推定値と実測値を比較した。日照時間の推定値と実測値に差がほとんどない地点も存在したが,山岳地帯などの起伏が激しい地域では推定値と実測値に差が見られた。
本研究では,20日分のAMeDAS積算日照時間と衛星データを用いて250m規模での積算日照時間空間分布を推定する事ができた。作成した積算日照時間分布推定図では,日本海側の平野部が比較的日照時間が長く,太平洋側では短い分布特性がある事が分かった。地形条件,衛星の観測角・太陽方位角・天頂角などを考慮すれば,日照時間の推定精度向上につながる可能があると考える。また,他の年度についても引き続き継続して解析を行う事で日射の好条件の場所とそうでない場所のポテンシャルを評価できると考える。
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