小林 由弘

水田表土色の水分条件由来の雑音成分低減による正規化土壌分光特性画像の生成

力丸 厚、高橋 一義

現在、農作物への残留農薬や化学肥料の流出による土壌汚染など、食の安全や農薬の環境負荷が大きな社会問題となってきている。これより農薬や肥料の減量が求められ、最適な量の農薬と肥料を与えるために農地の地力(腐植)を把握する事が求められている。しかし、地力の調査は現地圃場におけるサンプリング方式で、面的には調査されていない。さらにサンプリング方式による調査においても全農地の情報は把握されていない。このような背景から広大な農地の情報を効率よく取得するためにリモートセンシングの活用が注目されている。しかしながら、土壌の分光反射特性は同一土壌成分の場合においても、表面状態の違いにより観測される分光反射特性は異なる。これらはリモートセンシングデータを用いて広域にわたり土壌情報を把握する上でのノイズ要因となる。既往研究では、分光反射特性の正規化手法により、含水比や表面粗度の影響を低減できる可能性が示されている。そこで、本研究では水分条件由来の雑音成分として含水比以外に、にごりや湛水下の条件で土壌の分光反射測定を行い、分光反射特性の正規化手法の適用を行う。さらにデジタルカメラ画像や高分解能衛星画像上でも正規化手法を適用し、水分条件による影響を低減した正規化土壌分光特性画像の作成を目的とする。
具体的には、湛水下やにごりの状態での土壌の分光反射測定を行い、分光反射特性の正規化手法の適用を可視域と近赤外域を含めた波長域で行った。その結果、特に可視域でノイズ成分の低減効果を確認できた。分光反射測定結果から、デジタルカメラ画像でも同様に正規化画像を作成する事で水分状態による影響を低減できるか検討を行った。その結果、含水比が10%以下の風乾土壌であれば、可視域画像においても水分状態の影響を低減できる事を確認した。衛星画像の解析では正規化画像を作成する事で水分状態等の影響を低減し、腐植が同じような圃場を判読できるか検討を行った。JAの腐植目標値から腐植が3%未満を腐植が低い圃場とし、3%以上を腐植が高い圃場とした。腐植が低い圃場と高い圃場の可視域情報から正規化土壌分光特性画像の作成を行った。その結果、最大で80%程度の判別精度で腐植を推定する事ができた。
正規化手法を用いる事により、土壌の水分条件によるノイズ成分を低減し、正規化土壌分光特性画像を作成する事ができた。その結果、正規化前に比べ土色が均一でない圃場や暗色土壌において腐植の判別率が向上した。

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