小野寺裕
斜面縦断特性を考慮したDEMによる崩壊地形解析に関する基礎研究
力丸厚
平成16年の新潟県中越地震により地すべり、河道閉塞等の山岳災害が多数発生し、被害が拡大した。リモートセンシング技術を用いて山岳災害発生箇所の特性を把握することは非常に重要であり、豪雪・暴風雨等により山岳において災害が誘発されやすい環境状態に陥った時、危険地域の予測・推定が可能ならばその被害を軽減することが出来る。これまで本研究室では数値地形データを用いて崩壊危険箇所の推定を試みてきたが、崩壊の様式によって要因が異なること、地形の連続性といったことが考慮されていなかった。斜面崩壊は過程として落水方向への挙動を示し、落水線に沿う方向を斜面の縦断方向とすると、縦断方向における地形特徴成分の特性が斜面崩壊の素因として関わりうる。本研究では、崩壊危険箇所推定の基礎資料となりうる地形分類図を、斜面縦断特性を考慮して作成することを目的とし、分類図と斜面崩壊地の情報を対比することで崩壊地における地形的要因について考察した。
本研究では、まず、対象領域全域と斜面崩壊地における縦断面形状の比較を行い、斜面崩壊地における斜面縦断特性の把握を行った。DEMから斜面縦断方向と、各画素における傾斜量を求めた後、設定した縦断面範囲内における画素の傾斜量データを用いて崩壊地と対象領域全体で縦断面形状の分類を行った。2つの分類結果とクラス構成を比較することで、崩壊地における縦断面形状の特性把握を行った。その結果、崩壊地の持つ斜面縦断特性として、傾斜量が大きい、凹凸の絶対量が大きい、斜面途中の凹凸変化という3つの特性が得られた。
次に、得られた崩壊地の斜面縦断特性から、特に地すべり崩壊地の抽出に有効と考えられるS字指標を考案し、危険域推定を試みた。S字指標は上部凸・下部凹の斜面を検出する指標であり、縦断面範囲内の傾斜量データから2次差分を用いて算出した。設定した閾値以上を危険域として地すべり崩壊地と照合した結果、50%強の検出率を示した。また、先行降雨の影響を考慮し、横断曲率を用いて集水性が高い谷地形を抽出して、S字危険域のうち谷地形となる箇所を危険域として分類した。この分類図と地すべり崩壊地を照合すると、尾根地形や平地地形の分だけ危険域とした領域は少なくなったが50%前後の検出率を示した。2つの情報を組み合わせることで、効果的に地すべり崩壊の危険域を検出できる可能性が示唆された。
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