浦野 陽子

降水レーダーを用いた広域積雪モデルへの融雪過程の導入に関する研究

熊倉 俊郎

雪の防災管理、豪雪予測のためには、積雪量とその水平分布を知ることが重要であるが、積雪の多い山間部での観測は難しいことから、二次元の積雪量分布を推定するモデルの開発が求められている。本研究では、二次元の降雪積雪モデルに対して融雪過程を加えることを目的としている。
手法としては、2007・2008年の冬季について、森林総合研究所十日町試験地で観測されたデータを用い、デグリーアワー法と雪面に対するエネルギー収支法によって融雪量を推定した。エネルギー収支法では、放射収支量について、近藤らによる日平均値の推定方法とそれを時間平均値に推定するように修正した田中らの手法を用い、日照時間観測と雲量観測に基づいて2通りの推定を行った。また、顕熱・潜熱フラックス、底面融雪量は従来の研究の知見に基づいて行った。
結果としては、どの手法も実際よりも早く雪が消えた。デグリーアワー法による積雪水量の計算結果は、雪が消える時期は早いが、全体的な傾向をある程度再現することはできた。このことから、デグリーアワー法は雪の消える時期を見るのには適さないが、積雪の傾向を見ることは可能であることがわかった。雪面に対するエネルギー収支法では、日照時間に基づく推定、雲量に基づく推定共に降雪期の融雪量が実際よりも大きくなった。日照時間に基づく放射収支推定では、降雪期の融雪熱量が大きな値となった。これは長波放射がうまく算出されなかったためであると考えられる。また、雲量観測に基づく推定でも、日照時間による結果と同様に、降雪期の融雪熱量が実際よりも大きくなった。特に、雲量が少なく積雲が多い日などに融雪熱量が大きく見積もられた。そこで、雲量観測に基づく推定において、短波放射量が大きく見積もられる条件下の値に対し0.280を掛け、また小さく見積もられる条件下の値に対し3.103を掛けるという修正を加えたところ、降雪期の融雪熱量により近い挙動を示すことができた。融雪水量の計算結果は、修正前には観測値の約1.40倍であったのに対し、修正後は1.01倍と比較的近い結果が得られた。また、積雪水量の時系列変化は、デグリーアワー法では、雪の消える時期が実際よりも20日ほど早くなったが、雲量観測に基づくエネルギー収支法では実際よりも2週間ほど早くなるという結果になった。

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