松崎裕亮

新潟県で調達可能なフライアッシュを用いたコンクリートのフレッシュ性状及び硬化諸物性の系統的実験

下村匠

 アルカリ骨材反応(以下ASR)によるコンクリートの膨張は,構造物の美観を損ねるひび割れを発生させるだけでなく,場合によっては,コンクリート中の鉄筋を破断させることにより,構造物の性能に影響を及ぼす.
 新設構造物の場合,ASR対策として最も効果的であるのは,アルカリ反応性骨材を使用しないことである.しかし,現実の骨材事情を考えると,地域によっては,ASRを全く生じない骨材を選定・指定することは難しい場合がある.そこでそのような場合の対策のひとつとして,混和材にフライアッシュ(以下FA)を使用し,ASRを抑制することが有効と考えられる.しかし,FA使用により,ASR抑制効果だけでなく,フレッシュ性状,耐久性,ひび割れ抵抗性などコンクリートの諸特性も多少影響を受ける可能性がある.
 そこで本研究では,実際に新潟県で調達可能な骨材やFAを組み合わせて,FA使用コンクリートのASR抑制効果をはじめとして,中性化抵抗性,電気泳動法による塩化物イオン拡散係数,凍結融解抵抗性の耐久性に関わる特性,収縮ひび割れ抵抗性,フレッシュ性状について系統的に実験検討を行った.実験結果に基づき,FA使用コンクリートの性能の総合的な評価を試みた.
 FAの添加によりASRは抑制された.骨材によって良好なASR抑制効果の得られるFAは異なった.しかし比表面積が大きいFAのほうが,よりASR反応抑制効果が得られた.
 FAの添加によりスランプ保持性能は向上した.FA用AE剤を使用することで空気連衡性を安定化させることができた.ただし,フレッシュ保持性能の向上によりブリージング率は増加した.
 フライアッシュの28日圧縮強度は,フライアッシュを混和材と考えないセメント水比から,普通コンクリートの予測強度式によっておおよそ予測可能であった.また初期強度は低下するものの,長期養生により強度増進を見込むことが出来る.
 塩化物イオン抵抗性,凍結融解抵抗性は同水結合材比の普通コンクリートと同程度と考えてよい.また十分な養生をすることでこれらの性能は普通コンクリートよりも向上する.中性化速度は普通コンクリートよりも7割程度大きくなる.ひび割れ抵抗性は,同水結合材比の普通コンクリートよりも低下する.この原因は主に強度低下であると考えられるので,十分な養生期間を設けて普通コンクリートと同等になるまで強度発現させることで,応力緩和効果とあわせて,ひび割れ抵抗性は向上すると考えられる.

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