林 裕也

正、負曲げを受ける合成桁の終局強度特性に関する実験的研究

長井 正嗣,岩崎 英治

近年の建設コスト縮減要求に対し,鋼系橋梁では,合成2主I桁橋に代表される合理化桁が開発されてきたが,更なるコスト縮減要求に対して,本研究室では合成桁の塑性域での強度アップに着目し,新たな設計法の開発に取り組んでいる.本研究では,以下に挙げる4つの事項を目的とし,実験的に検討した結果を示すとともに,設計法について考察を加える.
1) 正の曲げモーメント(正曲げ)を受ける合成桁の終局強度評価にあたり,塑性中立軸が床版内にある場合,塑性強度が発揮できるかの確認を行う.
2) 負の曲げモーメント(負曲げ)を受ける合成桁の終局強度評価にあたり,コンクリートを完全に無視してよいかを検証,確認する.
3) 合成桁の強度照査にあたり,曲げとせん断の相関強度が照査されるが,その評価方法として各国で異なる照査法が提案されている.本研究では正,負曲げを対象に,相関強度の評価法について考察を加える.
4) スタッド本数の決定法として,本研究では独自の設計法を採用しているため,この影響がコンクリートと鋼桁の合成効果および終局強度に与える影響についても考察を加える.
以上の検討結果を要約すると以下のことが言える.
1) 塑性中立軸が床版内にある場合でも,コンクリートの引張域を無視して計算した塑性モーメント(計算値)に達することを確認した.
2) 負曲げ作用を受ける桁について,コンクリートを無視した[鋼桁+鉄筋]断面で終局強度を計算したが,実験値と計算値は良い一致を示し,コンクリート床版を無視した終局曲げ強度評価でよいと言える.
3) 曲げとせん断の相関強度特性に関して,正,負曲げを受ける場合,ともに,相関による強度の低下は認められなかった.本実験では照査を無視できる可能性について方向性を示せたと考える.しかし,検討したケース数が少ないことや,ノンコンパクト断面について,今後の更なる検討が課題として残った.
4) 本実験における,スタッド設計法で決定したスタッド本数を採用しても,弾性範囲内での合成挙動と塑性モーメントに達することが確認できた.これより,将来的には,スタッドの数を現行法に比べて少なくできる可能性を示唆できたと考える.

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