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戸嶋盛雄

中折れシールド機を用いた現場実験による地盤反力係数の逆解析Ⅱ

杉本光隆

現在，シールドの制御・操作は自動掘進システムにより行われている．しかし，地盤物性値やシールドに作用する外力，掘進中のシールド挙動は未解明な点が多い．そこで，掘削領域を考慮できるシールド機動力学モデルが開発されてきた．これまで，現場実測データを適用し，同モデルの合理性は，検証されている．しかし，これまで地盤物性値は，地質調査報告書や経験式などを参考に決めているが，場合によっては10倍程度の幅を持っていることがあった．
そこで，本研究では，シールド挙動に大きな影響を与える地盤反力係数に着目し，精度良く地盤反力に関係する地盤物性値を求めることを目的として，シールドジャッキ力およびシールド機位置・回転角から地盤反力に関係する地盤物性値を逆解析する手法を開発するとともに，現場実験データを用いて同手法を検証した．
実験現場は，N値が0に近い軟弱な沖積地盤を中折れシールドで掘削しているシールドトンネルの現場で，直線の平面線形を有するシールドトンネル内で，中折れシールドを停止し，段階的に中折れ角を変化させ，中折れシールドの挙動と，中折れさせるのに必要な中折れジャッキのジャッキ力を計測する中折れ実験を実施した．この結果，中折れさせるに伴い，中折れシールドが「く」の字に変位すること，中折れ角とともに中折れジャッキ水平モーメントが直線的に増加することが確認された．
中折れ実験の解析では，まず，中折れ実験直前のシールド機挙動シミュレーションを行い，施工関連の物性値を同定した．次に，これらの同定された物性値を中折れ実験結果に適用して，地盤物性値を逆解析した．この逆解析では，未知パラメータとして，側方静止土圧係数KH0，地盤反力係数kH，kV，主働土圧係数KHa，KVa，受働土圧係数KHp，KVpを用い，力の釣合い式として，水平中折れによる影響がもっとも大きい水平モーメントMp，および，施工条件の影響が少ない前胴に着目した．この結果，側方静止土圧係数KH0，主働土圧係数KHa，KVa，受働土圧係数KHp，KVpは既往の経験式と，あまり変わらなかったが，地盤反力係数kH，kVは既往の経験式の3～4倍となった．これは，既往の経験式は余掘りの影響を含んだ地盤反力係数を対象としていて，乱されていない地盤の地盤反力係数を過小評価していること，現場の孔内水平載荷試験等で得られる地盤反力係数に対して，トンネル周辺の地盤反力係数にはスケール効果があること等のためであると考えられる．

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