氏名    田邉 健太

論文題目  テール作用力におけるグリスの流動抵抗の実験的検討とその適用

指導教官  杉本 光隆

近年,都市の地下構造物はますます輻輳し,それに伴ってシールドトンネルのさらなる大深度化,急曲線化が進んでいる.加えて,コスト縮減の流れを受け,セグメントの薄肉化および幅広化が進んでいる.これらのことから,施工時にセグメントに発生する応力は以前より増大する傾向にあり,施工中のトンネルに発生する不具合が顕在化してきている.
そこで,本研究では,施工時荷重として影響がもっとも大きいと考えられるテール部作用力のうち,未解明であるグリスがワイヤブラシを通過する時のグリスの流動抵抗を定量的に求めることを目的として,ワイヤブラシとグリスを用いた要素実験を行った.
本研究では,ワイヤブラシ幅(100,300mm),ワイヤブラシ単位幅当たりのグリス透過流量(ピストン貫入速度10,30,50mm/min),ワイヤブラシ背面の水圧(0,100kPa)を実験因子とし,テールクリアランス35mmで,7ケースの実験を行った.以下に得られた結論を列記する.
(1)ピストン貫入速度が増加すると,グリス圧のピーク,収束平均は増加する.
(2)収束平均値,ピーク値ともに,ピストン貫入圧>グリス圧(切羽側)>グリス圧(テール側)となった.これは,グリスとグリスボックスの摩擦抵抗のためと考えられる.
(3)ピストン貫入圧は,ワイヤブラシ幅300mm<ワイヤブラシ幅100mmとなった.これは,ワイヤブラシ幅が広くなると,ピストン貫入力に占めるグリスとグリスボックス摩擦抵抗の割合が小さくなるためと考えられる.
(4)ピストン有効貫入圧,有効グリス圧は,水圧(拘束圧)にあまり依存しない.
(5)グリスと鉄の摩擦力の拘束圧依存性は,明確にできなかった.今後,グリス圧を変化させて,さらなる実験をする必要がある.
(6)グリスと鉄の摩擦力は,ピーク<収束平均となった.収束平均の方が,グリスとグリスボックスの摩擦抵抗が発揮されていることから,グリスと鉄の動的摩擦係数としては,収束平均の摩擦係数を用いた方がよいと考えられる.収束平均の場合,付着力cは1.9〜2.6kPaで,摩擦係数は0.042〜0.056(φ2.4〜3.2度)となった.
(7)グリスの流動抵抗力fは,ピーク>収束平均で,ピーク値は流量qとともに増加するが,収束平均は流量qに依存しない傾向となった.また,グリスの流動抵抗fとグリスの流量qの実験式を提案した.

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