小林 信治
 
 ベンダーエレメントを用いた三軸試験における土の剛性率測定
 
 豊田 浩史
 
 地震時の応答解析や交通荷重・機械荷重などの動的(繰返し)荷重による解析に必要となる比較的小さいひずみレベルでの地盤材料の変形係数は,室内試験や原位置試験によって求められている.周知のように地盤材料の変形特性は非線形特性を有し,ひずみレベルの増加とともにせん断剛性率は低下し,減衰比は増加する.これらの非線形性を求める室内試験方法として,三軸試験やねじりせん断試験装置などを用いて単調または繰返し載荷を与え,応力〜ひずみ関係から変形係数を求める静的載荷法,供試体にねじり振動などを与え,共振振動数や自由振動時の振動特性から変形係数を求める共振法試験などの振動試験法,供試体内を伝播する超音波速度やせん断波速度を測定することによって小ひずみでの初期せん断剛性率を求める超音波パルス試験やベンダーエレメント試験などの波動試験法などがある.
 既往の研究では、微小ひずみ三軸試験では土の剛性率を求めるにあたって,ヤング率とポアソン比を三軸試験より測定し土の剛性率を算出する.しかし,三軸試験ではヤング率の測定精度は高いが,ポアソン比の測定精度にはばらつきがある.そこで,本研究ではヨーロッパを中心に徐々に普及しつつあり,近年わが国においても様々な室内試験が行われているベンダーエレメントを用いた.ベンダーエレメントを既存の三軸試験機に取り付けてせん断波の伝播速度を測定することにより土の剛性率測定を目指す.
 また,ベンダーエレメント試験はまだ基準化されておらず,試験法を決定する必要がある.そこで,受信波形からの伝播時間の同定法の検討や入力周波数の検討,受信波形に含まれるノイズの除去方法の検討などを行った.使用した試料はわが国の標準砂でもある豊浦砂を用いて乾燥・飽和それぞれの条件で間隙比を調整した供試体を作製し,試験を行った.
 本研究より得られた結論を以下に示す.
・ 入力周波数が入力・受信波形に与える影響について検討した結果,高さ12cm程度の三軸供試体では,使用する周波数は10〜20kHzが望ましい.
・ 受信波形からのノイズ除去は雑音抑圧処理を用いることによりノイズを大幅に低減できる。このノイズ除去を行うことにより受信波形からのせん断 波到達時間の読み取り精度が良くなった.
・ 間隙比が小さくなるにつれ,各試験条件でもせん断波速度と剛性率は大きくなる.これらの値は既往の研究結果と同程度のものであった.
  今後は,微小ひずみ三軸試験とベンダーエレメント試験を用いて,ポアソン比の直接測定の精度の検証の実施.および粘性土におけるベンダーエレ メント試験の適用性を検討する必要がある.

前のページに戻るには"戻るボタン"で戻ってください。