河口 昌輝

韓国泰安近海で発生した原油流出事故における原油の拡散解析

細山田 得三

 自動車や飛行機などの交通手段の燃料、暖房機具やボイラーなどの外燃機関の燃料、プラスチックやゴムなどの石油製品など、石油は私たちの生活にとってなくてはならないものである。近年の原油価格高騰の影響によるガソリンや食料品を始めとする様々なものの価格が上昇していることからも、私たちの生活における石油の重要性がわかる。その石油の大部分はタンカーによって輸送されている。しかし、人為的なミスや悪天候によるタンカーの座礁などの油流出事故が絶えない。油流出は大規模な環境破壊に繋がることがある。
 2007年12月7日 7:15ごろ、香港船籍のタンカー「ハーベイ スピリット」号と海上クレーンを積んだタグボートが韓国忠清南道泰安郡近海(北緯36°49.93分 東経126°2.46分)で衝突 し、積載された原油302641KLのうち12547KLが流出した。韓国における油流出事故の最大の被害があったとされる、シープリンス号油流出事故による流出量は7200KL。島根県隠岐島沖で発生したナホトカ号の事故による流出量は6,240KL。今回はこれらの事故の2倍近くが流出した。そこで今回の事故による被害の把握、また今後同じような事故がおきた時に的確な防除作業を行うために、流出した原油がどのように拡散するかを把握する必要がある。そこで流出した原油がどのように拡散するかを把握することを研究の目的とした。
 対象地域では潮汐流も強いが、より吹送流が卓越していると考えられる。そこで準3次元モデルを作成し,吹送流による原油の拡散を数値解析した。基本式には連続式と運動方程式を陽的に差分化したものを用いた。これにより流出した原油の拡散計算を行った。
 本計算の解析結果より、原油は南へ拡散、移動することを確認した。その後、実現象と比較し対象地域では吹送流が原油の拡散に大きな影響を与えていることを確認した。また対象地域では冬季において季節風が強く、流出した原油は短期間で長距離に拡散、移動することを確認した。今後はより精度の高い風データ、地形データを用いた解析を行うことで高い精度の解析が出来ると考えられる。本研究では事故が発生した12月の1ヶ月間の拡散解析を行ったが、他の季節において解析することで今後の油流出事故に対する有効な対策計画の立案に寄与できると考えられる。その際、あわせて潮汐流や密度流を考慮する必要があるかを検討する必要がある。

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