桐村 忠

阿賀野川の河口砂州の再生に関する研究

細山田 得三

河口地形は、一般の洪水時の砂州のフラッシュによって、流出した土砂による河口テラスが形成される特徴がある。冬季では、河口テラスは、波浪、吹送流および潮流のような沿岸方向や岸方向への輸送力によって海岸に再配分される。
阿賀野川の河口砂州は、2004年の出水でフラッシュが観測され、そして、近年は河口砂州が上流側へ押し込まれる形となったため、2008年に海岸侵食による被害が発生した。阿賀野川の河口砂州は下流部の治水安全上の課題の1つとして挙げられている。問題点として、まず、砂州による河口閉塞により、洪水時に水位が上昇し、水害が発生しやすくなる。さらに、砂州に土砂が溜まることにより、河口部付近の飛砂、船舶の安全な航行への支障などの影響がある。一方、河口砂州は塩水の遡上を抑制する効果や河口のおける生態系維持への寄与などの有用な面もあり、必ずしも除去されることが望ましいわけではない。それらを踏まえた適切な河口管理技術の進展が望まれている。そのためには河口の動態について十分な知見を得るということが重要である。
本研究では、河口における波に応じて形成される海浜流と地形変化とを総合的に評価する細山田ら(2005)の数値モデルを使用した。これらは大変複雑であるため、本研究では入射波に正弦波である規則波を適用し、地形は2008年4月の深浅測量図から実地形を作成した。実地形での土砂の基本的な動作特性を把握するとともに実際の現地である阿賀野川河口の2009年4月の汀線図との比較を行い、計算モデルの妥当性を検証した。
入射波に新潟西海岸のエネルギーピーク波に対応した、波高4m、周期9秒の一定値を岸に対して90°に入射させ、10時間の計算を行った。砂州は時間と共に河川の上流側に押し込まれる結果となった。2009年4月の汀線図と比較すると、砂州が河川の上流側に押し込まれていくという現象は一致した。砂州の形状については今後検討する必要がある。
土砂の移動特性に関して、底面流速が増加するとその先の地盤高は増加しはじめ、その場所で土砂が移動していくことが示された。
以上の結果から、本研究で計算した数値モデルにより河口砂州の特性が明らかになった。今後の課題としては、初期条件の設定を実現象に近づけていく必要があると考えられる。

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