ken07205

氏名：永井大和

題目：吸音壁を考慮したセルオートマトン法を用いた騒音伝搬解析

指導教官：宮木康幸

騒音は日常生活に密接な関係があり，関心の高い環境問題の一つである．この問題を解決するため，騒音の発生源に対する個別の騒音伝搬解析や騒音制御技術が盛んに行われている．しかし汎用性を持った騒音伝搬予測技術はあまり開発されていない．そこで，これまでに2次元騒音伝搬モデルの開発を目的とし，セルオートマトン(CA)法を用いた計算を行なってきた．CA法は計算対象を均一な大きさのセルに分割し，各セルで定義された離散的な状態量を近傍のセル間に設けた局所近傍則によって，離散的時間を追って状態量を推移させる手法である．
昨年度までに，CA法の信頼性の検証をするために，1次元ではモード形状に関して理論値および差分法，自由音場を想定した2次元では距離減衰，回折減衰，干渉，ドップラー効果といった音の諸現象に関して理論値，実験式，差分法との比較を行なった．また，計算の安定条件を確立し，計算時間の測定を行った．その結果，精度は差分法と同等でありながら，計算時間はCA法が有利であることがわかった．さらに，2次元高架橋モデルに適用することにより，様々な遮音壁の形状による宅地地域での回折減衰量予測が可能となった．しかし，CA法を用いた定量的な評価は行われておらず，差分法以外の解析手法との比較も行われていない．また，壁セルが完全反射のみの考慮であるため，実現象の表現という点で物足りないものがあった．
そこで，本研究ではCA法を用いた２次元音場における定量的な評価および吸音性材料を考慮した吸音性壁面のモデル化を行い虚像法による理論解と比較検討することを目的とする．まず2次元における定量的な値に関する検討を行い，Benchmarkモデルを用いてCA法を解析解および境界要素法と比較し，遮音壁の設置前と設置後での減衰量の精度について比較，検討する．最後に，吸音性壁面の定式化を行い，CAモデルを用いて，虚像法による理論解との比較，検討を行う．その結果，２次元ではCA法を用いて定量的な騒音伝搬予測が可能であることがわかり，またBenchmarkモデルを用いることで，CA法が境界要素法や解析解とほぼ同程度の精度を有していることがわかった．吸音性壁面のモデル化では，吸音率が0.7以上になる場合においては，モデル化のさらなる検討が必要であるということがわかった．

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