小野 太士

効果的な先端改良型遮音壁形状に関する屋外模型実験

宮木 康幸

 近年,騒音問題は悪化の一途を辿り,特に自動車交通騒音は大きな環境問題の一つとなっている.自動車交通騒音の一般的な対策として遮音壁の設置や低騒音舗装の敷設等が実施されているが,環境基準の達成度は約4割と,なお厳しい状況にある.また,対策手法の一つである遮音壁においては,壁の単純な嵩上げにより,日照阻害や電波障害,景観上の問題などが起きている.そこで,このような問題に対応すべく,壁の高さを保ったまま遮音効果を向上させることのできる先端改良型遮音壁の開発が進められている.しかし,現状の先端改良型遮音壁は,先端改良装置の複雑化や高度化により,ごみや雪の堆積,施工性,高コスト化など多くの問題を抱えている.
 そこで本研究では,現状の先端改良型遮音壁よりも施工性・メンテナンス面に優れた,段差を表現した先端改良装置を考案・設計し,その遮音効果を屋外模型実験とCA法を用いた騒音伝搬解析によって確かめることで,新しい先端改良装置の一形状を提案することを目的とした.まず,現状の先端改良装置が抱える問題への対策,施工性,音の性質などの観点から新しい形状の先端改良装置を考案・設計・作成した.次に単純壁と新しい先端改良型遮音壁に関する屋外模型実験を行ない,得られた実測値の比較・検討を行なうことで先端改良装置の有する騒音低減効果を確かめた.最後に,屋外模型実験をセルオートマトン法によってモデル化し,計算値の比較・検討から先端改良型遮音壁の騒音低減効果を確かめることで,実用化が可能であるか検討を行なった.
 その結果,考案した先端改良装置は,高周波域において大きな減衰量が得られること,単純壁よりも大きな騒音低減効果を有していることがわかった.また,この先端改良装置を逆向きに取り付けた場合は,実測値と解析値で全く違う傾向を示したことから,明確な騒音低減効果を得られなかった.
 先端改良装置の段数の違いによる騒音低減効果の変化に関する検討も行なった.その結果,各周波数において騒音低減効果の向上する段差の数・大きさがあることがわかった.
これらの結果から,この先端改良装置は周波数や音源・受音点位置に大きく依存するため,特定条件下における壁の高さや形状の最適化を行なう必要がある.

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