ken07104

馬渕　智仁

促進劣化を施したアスファルトコンクリートの疲労破壊抵抗性に関する研究

高橋　修

　自然環境下に長期間曝露されているアスファルト舗装において，アスファルトコンクリート（以下，アスコン）中のアスファルトバインダ（以下，バインダ）は時間の経過とともに物理的および化学的に変化する．この変化は経年劣化と称され，アスコンの長期供用性や耐久性にかなりの影響を及ぼすことが知られている．そのため，経年劣化によるバインダおよびアスコンの物理性状の変化を把握し，配合設計や構造設計にその影響を考慮する必要がある．また，わが国のアスファルト材料の現状として，改質アスファルトバインダ（以下，改質バインダ）の使用が年々増加している．しかしながら，改質バインダについては，経年劣化による物理的性状の変化があまり検討されていない状況下にある．
　そこで本研究では，経年劣化による影響が大きく，アスコンの長期供用性や耐久性を示す指標である疲労破壊抵抗性に着目し，改質バインダおよび改質アスコンの劣化特性を明確にするとともに，通常のバインダを使用した場合との違いを定量的に評価することを目的としている．検討方法としては，恒温槽によって4水準の促進劣化（期間，2日，4日，8日，12日）を施したアスコンを用意し，繰返し曲げ試験を実施してアスコンの疲労破壊抵抗性を評価した．その後，これらのアスコン供試体からバインダを回収し，そのバインダについてわが国で一般的なバインダ性状試験と新しい評価方法であるDSR試験を実施した．以上の試験結果から，経年劣化による各種バインダの物理的性状の変化をより具体化するとともに，それらのバインダを使用したアスコンの物理的性状とその変化を把握し，これらの関連性について検討した．そして，これまでの検討に引き続き，繰り返し作用する輪荷重によってアスコン層が時間の経過とともに累積していくダメージについても評価した．
　以上の検討により，以下のことが明らかになった．改質バインダはストアスよりも，温度変化や劣化の進行が生じても，それらに対する粘弾性状の変化，およびその他の物理的性状の変化が小さい．そのため，改質バインダを使用したアスコンは温度変化や劣化の進行による強度の低下がかなり少なく，ストアスを使用したものよりも疲労ひび割れ抵抗性が優れている．また相関分析の結果より，DSR試験の評価指標である，からアスコンの劣化傾向をある程度評価することが可能で，さらに疲労破壊抵抗性についても評価できることを確認した．したがって，アスコンの疲労破壊抵抗性の変化はバインダとして用いているアスファルトの劣化特性によって推定することが可能である．

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