永井康之

散居集落の市街化過程実態と土地利用コントロール手法に関する研究

中出文平・樋口秀・松川寿也
 
本研究では,富山県の砺波平野に位置する砺波市及び高岡市を対象に,市街化の実態や土地利用規制の特徴を把握し,土地利用上の問題や制度上の問題を明らかにすることで,今後の散居集落での土地利用コントロール手法に関して提言を行うことを目的としている。
本研究により,以下の問題点が明らかとなった。
線引き都市の高岡市側と非線引き都市の砺波市側での開発を比較すると,量・質共に明らかに違いが生じており,同様な散居形態を持つ地域でありながら,規制の緩い砺波市側での開発が頻発し,農用地区域での開発も多い状況にある。この結果,砺波市では昭和50年当時からみられる散居形態とは異なる第二の散居化と呼べる状況が発生し,昭和50年当時の散居景観が喪失しつつある。このように規制の厳しいはずの農用地区域での開発が容易に行われた背景には,富山県の農振制度が挙げられる。この制度の特徴は農振除外申請地から50m以内に宅地が存在すれば開発の可能性が高まることやこの50m範囲が開発により次々と拡大していくことである。これに加えて,砺波市では散居という集落形態により,農地の集団性に対する考え方が緩く,農振除外が起きやすいことも挙げられる。また,散居集落では特有の集落形態や散発的開発により,土地利用が混在し,農地と集落を明確に区分することが困難であるため,区域を設定しての土地利用コントロール手法が難しい。
以上のことから,本研究では以下のことを指摘する。
現在の土地利用制度の運用を散居集落の土地利用に見合った方針に改善する必要がある。また,散居形態は各自治体を跨いで広範囲に存在している為,単独自治体による土地利用規制では,その周囲の散居集落に開発圧力が流れる可能性がある。今後は散居集落を抱える隣接自治体による広域的な土地利用規制が必要である。高岡市及び砺波市では今後,ゾーニングを伴う土地利用規制を検討しているが,この際には散居集落特有の分散宅地や開発により用途が混在した土地利用を踏まえた上で,区域設定及び区域内の開発規制の内容を詳細に決めていく必要がある。


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