池田 純士

地方都市におけるマンションと地域コミュニティに関する研究

樋口 秀、中出文平

近年、多くの都市で市街地の拡大、中心市街地の空洞化が問題視され、これまでの郊外開発優先の都市政策を見直し、コンパクトシティの形成に取り組み始めている。その中ではまちなか居住が推進されており、共同住宅としてのマンションが人口回帰効果を促すとされている。
しかし、一般にマンションは、周辺居住者の生活環境の悪化や付き合いの困難さから地域コミュニティと打ち解け難いと考えられている。そこで本研究では、地域コミュニティと溶け込むマンションの在り方を検討するため、町内会からの受け入れと周辺居住者の意向から、マンションと地域コミュニティの構造の実態を把握し、相互の関係性を明らかにすることを目的とする。
はじめに、新潟県長岡市の1970年DID(まちなか)内で2005年国勢調査小地域集計データを用いて、人口・世帯数の動向を把握し、各地区を類型化した。まちなかに立地する2000年以降に建設された30戸以上のマンションは50棟存在した。まちなかには181地区存在するが、対象マンション存在地区が35地区、非マンション存在地区は146地区となった。
次に、町内会とマンションの関係を把握するため、類型化した地区に存在する町内会とマンションの代表者へヒアリングを行い、地域コミュニティの形成基盤となる町内会活動の実態、マンションの受け入れ状況、マンション内の組織活動を明らかにした。町内会とマンションとの関係については、無縁、町会費納入のみの関係、管理人の町内会への参加、マンション居住者の町内会への参加、の順に4段階の関係があり、多数が町会費を納めるのみの関係であった。また、マンション内のコミュニティが充実しているマンションは地域にも開かれたマンションとなる可能性が高いと推測された。
そして、詳細検討地区5地区を抽出し、マンション周辺居住者へのヒアリング調査を行った。周辺戸建住宅居住者の居住実態、現在の居住状況、今後のマンション建設への意向を把握した結果、今後のマンション建設に対して65世帯中43世帯(72%)が反対を示した。しかし、ファミリー世帯用のマンションに対する反対意見は6世帯に留まった。
まちなか居住を推進するためには、マンションの建設が不可欠であるが、地域コミュニティとの協調を図るためには、それぞれの地区で事前に将来像を描き、許容できる共同について検討しておくことが必要である。

前のページに戻るには"戻るボタン"で戻ってください。