高橋 宏美

ライフライン途絶に対する企業生産レジリエンシーの評価手法に関する研究

指導教員:松本 昌二,土屋 哲

今日の社会生活は,電力,水道,ガスなどのライフラインに大きく依存している.このため,大規模な地震によりライフラインが損傷した場合には,社会がこうむる被害は甚大なものとなる可能性がある.ライフラインの機能損傷がもたらす二次的被害を軽減するためには,施設そのものの強化やバックアップ機能の強化など効果的な施策を実施していくことが重要である.
災害時に一部のライフラインが途絶状況下にあっても,自家発電の利用や投入エネルギーの代替・節約,他地域での代替生産といった様々な対応策をとることにより,企業の操業水準は完全に停止状態になってしまうわけではない.これは,企業が予期せぬ災害に対して適応的に行動したり,あらかじめ災害を想定して事前対策を行っていたりするためである.災害が社会経済に与える影響を評価する場合には,このような要因(災害発生後の適応行動や発生前の対策)を考慮して社会経済的な評価ができることが望ましい.
本研究では,企業生産活動における災害時のライフライン途絶への耐性(レジリエンシー)に着目し,製造業,非製造業のレジリエンシー特性を評価する方法についての検討を行った.具体的には,電力,水道,ガスという供給系ライフラインを投入要素にもつ生産関数を仮定し,新潟県中越地震時の事業所アンケート調査をデータとして用いて,生産関数中の代替パラメータの推定を実際に試みた.これは,被害評価のための応用一般均衡モデルの中での利用を念頭においたものである.
パラメータの推定値から,生産関数のいずれの階層においても製造業の方が非製造業よりも小さい代替弾力性を持つ結果とった.これは,ライフラインの途絶が起こった場合に,製造業の方がより大きな影響を受けることを意味する.逆に言うと,非製造業の方が高い代替弾力性を持っており,ライフライン途絶に対して製造業ほど致命的な影響は受けないものと考えられる.しかし,いずれの産業業種も代替弾力性はほぼ0に近い値であり,代替の程度は小さいであろうと考えられる.


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