今井 司

コミュニティバスによる生活交通確保の取り組み〜新潟県魚沼市を対象として〜

松本昌二,佐野可寸志,土屋哲

自動車の運転ができない交通弱者にとって、バスなどの公共交通機関は生活の足として必要不可欠である。モータリゼーションの発展によってバス利用者は減少し続け、さらに需給調整規制の緩和が2002年実施されたことでバス事業者は不採算路線から撤廃し、交通弱者の足を確保できなくなった。これらの状況は中山間地域において顕著に現れており、福祉の視点からすると、たとえ事業として不採算でもバス路線を維持しなければならない。中山間地域では公共交通自体の需要が少なく、通常の路線バスの形態では運営できない。そこで低需要地域において近年運行されているデマンド型乗合タクシーに着目し、本研究の対象地域である魚沼市入広瀬地域に導入できる可能性があるか、アンケート調査から明らかにした。
まず現在市が運行している通学福祉バスの乗客数を解析した。その結果利用者は「通学の小・中学生」「高齢者」のに属性に大きく分類できた。また運賃収入を解析すると7割から8割が学生と高齢者で占められており、収益が少ないことがわかった。
入広瀬地域全世帯を対象にしたアンケート調査を行った。高齢者の主たる外出目的だと考えられる「通院・買い物」について外出回数を聞いた。またこの地域の高齢者は総合病院と個人医院の両方に通っている住民が多いことがわかった。これらの目的に使う代表交通手段を聞いたところ、トリップ長が長くなるほど自動車を使用する割合が高いことがわかった。
今までの解析を通して見えてきた住民の特性を考慮した新しい公共交通システムの提案を行った。まずアンケート調査から住民がどのようなサービスを望み、どのようなサービスを嫌がるか、アンケート調査から明らかにした。結果、隔日運行や電話予約に抵抗を持つ住民が多くいることがわかった。新しい乗合交通システムでは、一日の時間帯を「登下校時間帯」と「日中」に分け、固定時刻・固定路線方式の「通学バス」と、固定時刻・非固定路線方式の「乗合タクシー」の二種類を運行することとした。これらの運行費用について試算を行った結果、乗合タクシーは1日あたり25000円で運行できる可能性がわかった。

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