今井 健太郎

長岡市における物流関連施設の立地要因に関する基礎的研究

松本 昌二、佐野 可寸志、土屋 哲

 日本の多くの地方都市においてはモータリゼーションの進展や経済情勢の変化などによって近年都市中心部での事業所の減少や郊外流出が問題となっている。郊外部においては交通網の整備や工業団地等の基幹施設整備により事業所の増加が起こっている。多くの事業所では何らかの物の出入りが発生し、そのほとんどを貨物車が担うことを考えると、事業所立地が交通に与える影響は大きいものと考えられる。特に物流量の多い事業所が交通の便のよい場所へ集約整備されることにより、貨物車の市街地内への流入を減少させ、渋滞の緩和やCO2排出量の減少等が期待できる。
 そこで本研究では地方都市のひとつである新潟県長岡市を対象に事業所立地の経年変化を把握し、事業所数の増減の大きい地区での事業所立地の現状の把握と立地要因の分析を行うことを目的とした。
まず市内の地区別産業別の事業所立地動向を既存の統計資料を用いて調べた。長岡市全体としては事業所数が近年減少傾向にあり、特に市の中心部ではその傾向が顕著となっている一方で,長岡IC周辺や国道8号、17号沿線地区で事業所の増加が大きくなっていることが明らかとなった。そこでそれらの事業所増減の大きな地区の事業所に対しアンケート調査を実施し、事業所立地の現状と立地要因の分析を行った。事業所の増加の大きな地区としては長岡IC周辺部を選定し、減少の大きな地区としては主に市の中心部の地区を選定して調査対象とした。事業所の増加が大きな地区では比較的大規模な事業所の集積が見られ、物資の搬出入圏域が広範囲に及ぶ事業所の割合が高くなっていることが分かった。またこの地区では75%以上が移転事業所であり、事業拡大に伴って施設が手狭になったことと交通条件が移転の理由となっていることが明らかとなった。事業所の減少が大きな地区においては比較的小規模な事業所の割合が高く、物資の搬入元や搬出先が狭い範囲内にある事業所が多いことが分かった。またこの地区では全般に周辺環境や事業所施設への満足度が低く、物流関連の事業所では特に交通環境への満足度が低くなっていることが明らかとなった。
 以上から事業所の立地にはその物流活動が影響し、特に物流活動の盛んな事業所にとっては交通条件がその立地にとって重要な要因となることが示唆された。

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