蘇 陽

路面電車の利用者数に関する計量分析

松本 昌二、佐野 可寸志、土屋 哲

本研究では、現在、わが国の都市交通問題として渋滞、騒音、渋滞による大気汚染、モータリゼーションの進展による公共交通機関の衰退とあり、これに伴う交通弱者の増加、自動車利用施設の郊外立地による中心街の衰退等、様々な問題が指摘されている。主として自動車交通に起因する運輸部門でのCO2排出量の増加について、早急な対策が求められる。京都議定書では明確なCO2の削減目標が義務づけられているため、燃料消費効率の良いバス・路面電車(LRT)等の公共交通機関の利活用施策が望まれている。

 近年、諸外国では路面電車(トラム)が見直され、ライトレール、LRT(Light Rail Transit)の名称の下で、新たな都市の公共交通機関として役目を担うようになってきている。日本においても、路面電車の再評価や低床車両などの新型車両導入などが行われ、富山港線のLRT化である富山ライトレールの開業が注目されている。しかし、既存の路面電車では乗客が減少し、不採算のために路線が縮小・廃止されるケースも見受けられる(2005年、岐阜市内線、美濃町線の廃止)。既存の路面電車を活性化するためには、もちろんハード、ソフトにわたるシステムの改良が必要であるが、路面電車の運行実績から学ぶことも必要と考える。

 我々は、日本で運行されている路面電車について、2002年データを用いて輸送需要のクロスセクション分析を行い、さらに欧米(フランス、イギリス、アイルランド)で運行しているLRTとの比較を行った。1)2)しかし、需要分析は本来、時系列分析を行う必要があるので、本研究では時系列データを使用して需要関数の推定を試みる。
すなわち、本研究では、18都市で運行されている路面電車21路線(2004年現在)について、1992〜2004年の時系列データを使用して需要関数の推定を行い、特に運賃やサービス水準(運行頻度)などに対する弾性値を算定し、路面電車活性化の方策を検討することを目的とする。需要関数の推定にあたっては、個別路線毎の需要関数の推定をベースとして、複数路線をプールした需要関数の推定を行い、統計的に適合度のよい需要関数の推定を検討する。

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