清水 幸太

層状結晶構造を示すビスマス系複合銅酸化物における混合伝導性

佐藤 一則

SOFCの空気極材料では電子と酸化物イオンによる混合伝導が必要である。また、動作温度1000℃付近では、各構成材料の熱膨張率の不一致による割れなどの耐久性の問題から目安として800℃以下での低温動作化が望まれている。しかし、電子・イオン伝導性(混合伝導性)が低下する。したがって、混合伝導性の向上が重要となる。本研究では、新規空気極材料として、Bi2Sr2-XLaXCuO6+δ(Bi2201)、Bi2Sr2Sm1.5Ce0.5Cu2O10+δ(Bi2222)、Bi2Sr2YCu2O8+δ(Bi2212)、Nd1.32Ce0.27Sr0.41CuO4-δからなる層状結晶構造を示すビスマス系複合銅酸化物に着目し、BiO二重層による酸化物イオン伝導とペロブスカイト型CuO2層による電子伝導が比較的低い温度で期待できる。
酸素濃淡電池測定結果より、Bi2201、Bi2222において起電力を示した。この結果から、より高い起電力を示したBi2201に着目した。Bi2201においてLa置換量X増加に伴って、BiO二重層に挿入されている過剰酸素量が増加し、結晶構造の転移に寄与したことを示している。X=0.8以上の正方晶の領域において酸素濃淡電池起電力を示し、さらに、X増加に伴って起電力が上昇し、X=1.0で最も高い酸素濃淡電池起電力を示した。この結果は、ビスマス系複合銅酸化物のBiO二重層において、SrのLa置換によって過剰酸素量が変化し、結晶構造と酸素空孔濃度に影響を与え、酸化物イオン伝導の発現に寄与する可能性を示している。
Bi2201において、直流四端子法による導電率測定結果から、La置換量X=0.5の斜方晶では金属的な挙動を、X=1.0の正方晶では半導体的な挙動を示した。この結果から、Bi2201におけるキャリアの原因となる過剰酸素量と、結晶構造の転移に伴う酸化物イオン伝導の有無が導電率の温度依存性に深く関与している可能性を示した。一方、封着材として使用したパイレックスガラスの主成分であるSiO2との反応物として生成されるLa10Si6O27系化合物における酸化物イオン伝導による影響についても検討した。
以上の結果から、Bi2201は、La置換量Xの影響を受け、同時に挿入される過剰酸素量よって結晶構造の転移が起き、酸化物イオン伝導が発現し、混合伝導を示す可能性があることを見出した。

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