高和真吾

担体投入型膜分離活性汚泥法における膜透過性能と窒素・リン除去に及ぼす凝集剤添加の影響

指導教員 小松俊哉 姫野修司

近年,浄化センターにおいて富栄養化の原因である窒素・リンを除去する高度処理が求められている。また,リンは枯渇資源であり,リン除去プロセスを組み込んだ下水汚泥はリンを高濃度に含有することから,下水汚泥からリンを回収することが期待されている。
本研究室では高度処理のひとつである一槽間欠曝気式硝化脱窒法の膜分離活性汚泥法に着目している。これまでに,反応槽内に担体を投入することで,窒素除去能が向上すること,担体が膜面に衝突し膜面に付着・堆積した物質を剥離する効果があり,高い曝気量を削減できることを明らかにした。しかし,リンは十分に除去できなかった。
そのため,安定的にリンを除去するため凝集剤であるポリ塩化アルミニウム(以下,PAC)を反応槽内に添加して短期連続運転を行った結果,膜透過性能は約60日目,リン除去量は約100日目から低下した。
そこで,それらの影響を抑制するため,MLSS濃度を制御した長期連続運転を行い,PAC添加による膜透過性能と窒素・リン除去への影響,リン回収方法の検討を行った。実験条件は,全系列に担体を添加し,設定HRTは6時間,run1:PAC添加・無,設定MLSS濃度12000 mg/L,run2:PAC添加・有(2 mg-Al/L),設定MLSS濃度12000 mg/L ,run3:PAC添加・有,設定MLSS濃度8000 mg/Lで,長岡浄化センターの実下水(沈砂池越流水)を流入水として,約250日間の連続運転を行った。
 以下に本研究で得られた主な結果を示す。
・膜透過性能におけるろ過抵抗の平均はrun1:7.21×107 1/m,run2:7.85×107 1/m,run3:7.10×107 1/mであり,run2はrun1より高く,run3は最も低かった。MLSS濃度を低くすることでPACを添加しても担体の流動性の確保ができたためと考えられる。
・BODの除去率はrun1:98.4 %,run2:98.7 %,run3:98.6 %,TOCの除去率はrun1:93.8 %,run2:94.2 %,run3:94.3 %,TNの除去率はrun1:54 %,run2:62 %,run3:60 %であり,全てPACを添加したrun2,run3が良好であった。
・TPの除去率はrun1:58 %,run2:75 %,run3:71 %であり,PAC添加の効果が明確に表れ,安定した除去ができた。MLSS濃度を制御することにより無機汚泥の蓄積の進行を抑制したため,リン除去量の低下を抑えられたと考えられる。
・色度はrun1:15度,run2:8度,run3:12度であり,PACを添加した系,特にrun2が良好であった。
・汚泥中リン含有率はrun1:2.6 %,run2:3.8 %,run3:4.7 %であり,アルカリ溶解法によってリン回収実験を行った結果,回収率はrun1:52 %,run2:45 %,run3:40 %であった。
 本研究ではMLSS濃度を制御することにより,PAC添加による膜透過性能とリン除去量の低下の影響を抑制することができた。さらに,PACの添加はリンの除去だけではなく,有機物,窒素,色度の除去にも有効であった。また,PACを添加した汚泥から約50 %のリン回収率が得られた。回収方法については今後も検討が必要であるが,膜分離システムにおけるリン回収は,MLSS濃度が高いため効率的なシステムとなり得ることが示唆された。

前のページに戻るには"戻るボタン"で戻ってください。