草場 大作

合流式下水道越流水の長期観測に基づく汚濁負荷解析と対策の検証

姫野修司,小松俊哉

合流式下水道は,雨天時に大量の雨水と共に汚水が未処理のまま公共用水域に放流される合流式下水道越流水(以下、CSO)が全国的に問題となり,放流先水域の公衆衛生,生態系,景観への影響が懸念されている。公共用水域の水環境を保全するためには,CSOの放流実態や汚濁負荷の流出特性を正確に把握し,効果的な対策を講じる必要がある。
しかしながら,CSOは下水管渠を流れる汚水に加え,地表面に分布したノンポイント汚濁負荷が含まれるため,発生源や発生量の特定が非常に難しい。また,雨天時の流出時には降雨や地表面の形状によりその挙動が大きく異なるため定量化が非常に困難であり,その発生は気象や人的活動など多くの不確定な要因が複雑に影響している。従って,CSO対策にはそれらを反映させた流出解析モデルを用いたシミュレーションが有効であると考えられる。
 そこで本研究は、CSOの長期モニタリングシステムを構築し,連続降雨を対象に約43ヶ月間CSOモニタリング調査を行い,雨水流出特性や流出状況の実態把握を行った。また,これら長期の実測データから,CSO汚濁負荷の流出による影響を定量的に評価・検証していくために流出解析モデルを適用し,より信頼性,妥当性を有するモデルの構築,汚濁負荷に影響する因子の同定を検証していくこととした。
調査の結果,年間140回以上のCSO放流が確認され,初期に流出する汚濁負荷が非常に高くなることを明らかにした。また,汚濁負荷の流出特性を把握するため,流量との関係性について検証した結果,流量に対する負荷量の履歴曲線による解析から地表面等のノンポイント汚染源の残存負荷の影響を受けることが示唆された。
このような挙動を再現するための,流出解析モデルとして本研究ではMOUSEを適用して汚濁負荷解析を行った。まず,汚濁負荷解析に適用可能な解析モデルを構築するため,9降雨を対象にモニタリング2地点同時の雨水流出解析を行った。その結果,2地点の同時解析で共に平均で98%以上の高い合致率が得られた。また,実測総流量に対する解析総流量の割合を表す適合度も,誤差が20%以内を満たす結果となり,非常に高い再現性を有する流出解析モデルを構築することが出来た。また,汚濁負荷の定量化を行うために,地表面堆積負荷流出及び管渠内堆積負荷流出モデルにおける再現性の検証を行った結果,パラメータ決定の汎用性に課題を残したものの実測と高い整合性を得ることが出来た。
これらの結果から,これまで課題とされてきたモニタリングデータの体系だった蓄積と流出解析モデルを活用した汚濁解析が可能となった。

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