大井田朋子



着色廃水の物理化学的処理に関する研究



山口隆司



 近年,環境問題への関心の高まりから,水域での着色廃水が問題として取り上げられている.その中でも,繊維染色加工業から排出される着色廃水は,水質汚染防止法の排水基準については満たしている場合でも,着色成分は未処理となっていることが多い.着色廃水の処理に関する規制は,国内で和歌山市がいち早く実施している.他の自治体でも規制導入の検討がされているが,経済的で,かつ効率的な脱色技術の確立が成されていないため,未だに導入されていないのが現状である.そこで本研究では,物理化学的排水処理法のひとつである次亜塩素酸酸化法による脱色効果の検討を進めている.試料は,アゾ系着色料のオレンジI, 染色工場の実染色廃水(以下,実廃水)を用いた.着色度は着色度計によって測定した.次亜塩素酸酸化に用いた試薬は次亜塩素酸ナトリウム溶液であり、脱色反応時間は0.5時間とした.
 次亜塩素酸を用いた脱色作用に対するpHの影響の検討実験を行った。次亜塩素酸ナトリウム溶液で脱色作用を担っているのは,次亜塩素酸と次亜塩素酸イオンである.これらはpHにより存在比率が変化する。いずれが脱色に有用であるのか検討を行った.初期着色度2000度,pH 6,7,8に調製した試料を用意し,それぞれの試料に次亜塩素酸を添加していき,着色度を測定した.その結果、オレンジ・単独の着色料が溶解する着色水に比べ,多様な染料が混在する実廃水の方が,より次亜塩素酸を必要とする特徴が観察された.また,脱色効果に対するpHの影響は,あまりみられなかったことから,次亜塩素酸と次亜塩素酸イオンの存在比率の違いが脱色効果にあまり影響を与えないことが推察された.
 次亜塩素酸の脱色率に対する初期着色度の影響評価の検討実験を行った。実廃水を用いて初期着色度500,1000,2000,3000,5000,7000の試料を用意した.それぞれの試料はpH 7に調製し,次亜塩素酸を添加してき、着色度を測定した.その結果、初期着色度500〜7000度において,次亜塩素酸酸化を行った後の脱色率は60〜80%であった.脱色率が60〜80%に留まった理由は,次亜塩素酸では分解できない染料が残留しているからと考えられる. また,初期着色度が低いほど脱色率が高くなったことから,最終処理水の着色度をより低くするためには,生物処理等で着色度を極力落としてから次亜塩素酸酸化処理を行うことが望ましいと考えられた.

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