片平智仁



食品廃棄物を対象とした無加水中温メタン発酵技術の開発



山口隆司



 希釈水を添加しない無加水メタン発酵法は、従来の湿式法と比較して、処理後に発生する発酵液の減量化及び、装置全体の大きさをコンパクト化することが可能となり、コスト面でのメリットを有している。しかし、基質を希釈せずに処理することによりアンモニア等のメタン発酵に対する阻害物質も発酵槽内に高濃度に存在してしまう。そこで、本研究は無加水メタン発酵法を用いた生ゴミの処理を行うことにより、無加水メタン発酵法の確立に向けた基礎的研究および無加水メタン発酵法確立の為に必要不可欠なアンモニア阻害回避技術の開発を目的として行った。

発酵槽内温度37℃とし、発酵槽全容積15L(内、発酵容積10L)、植種汚泥として消化汚泥を用い実験を行った。アンモニアによるメタン発酵阻害対策のために、アンモニアストリッピングを利用したアンモニア吸収塔を各リアクターに設置した。攪拌の有無によるアンモニア除去特性とそれに伴う処理性能比較を行うために本リアクターをベースとした攪拌方式の異なる3台のシステム(静置、ガス攪拌、完全混合)を用意した。供給基質は、学生食堂より排出される調理残渣と残飯を粉砕混合し用いた。本研究で用いた生ゴミは、窒素濃度が6500 mgN/kg-w.w.程度であり、脂質含有量が高い傾向が見られた。

 COD容積負荷4 kgCOD・m-3・d-1、HRT 60日の一定負荷で実験を行った結果、処理良好時には攪拌方式によらず、発酵槽内pH8.2程度、メタンガス濃度60%、COD除去率80%、VS除去率80%以上と良好な結果が得られた。各発酵槽共に徐々にアンモニアが蓄積していき、最終的には4000mgNH4-Nkg-w.w.-1になったが完全混合方式では破綻の傾向もなく運転できた。アンモニア吸収塔を設置することにより発酵槽内のアンモニアを吸収塔に吸収することが可能であり、攪拌方式を有することにより吸収効率を上昇することが分かった。攪拌を有することにより基質の分解効率が上昇し、静置方式よりVFA蓄積を抑えることが分かった。以上のことから、汚泥表面と循環ガスの接触効率が良いほどアンモニア吸収効率が向上し、攪拌を有する方ことにより良好な処理が行えることがわかった。しかし、アンモニア阻害回避にはまだ不十分であり、多槽式システムを取り入れたアンモニア対策などを行っていかなければならないことも明らかとなった。

前のページに戻るには"戻るボタン"で戻ってください。