大河原正博

実下水処理嫌気性バイオリアクターからのメタンエネルギー回収技術の開発

山口隆司

低温・低有機物濃度排水である都市下水の処理に代表的な嫌気性排水処理法であるUASB法を適用すると,嫌気性微生物群の活性が低下し,グラニュールの維持・形成が困難である他,バイオガス生成量の低下によるスラッジベッドの攪拌効果が低減するという問題が挙げられる。一方,Expanded Granular Sludge Bed (EGSB) リアクターは,高い上昇線流速をスラッジベッドに付与する事で生物膜を流動化させ,基質との接触効率の向上を実現するものである。そのためメタン発酵不適条件下においても,排水の高効率・高速処理が可能であるとされており,成功例も報告されている。そこで,本研究では低温・低濃度有機性排水の嫌気性処理に関して研究実績のあるEGSBリアクターを都市下水の処理に適用し,処理特性およびメタンエネルギー回収性能の評価を行うことを目的とした。本実験の結果,生成されたメタンガスは,ガス化回収した量以上に処理水中に溶存し,回収できていないことが明らかになり,嫌気性排水処理法の決定的なメリットが損なわれている結果となった。溶存メタン含有の嫌気性処理水は,環境中に放流すると物理的作用によりメタンが大気に放散し地球温暖化の促進に繋がってしまう。
既往の研究にて,本研究室で開発されたDHS内での溶存メタンの消長を調査した結果,直ちに大気に放散することが明らかになっている。そこで,溶存メタン回収DHSによる嫌気性処理水の溶存メタンガス化回収連続実験を行った。その結果,溶存メタンをガス化回収することが可能であることがわかった。特に,20℃を下回るような低温条件下では,嫌気性処理槽単独では生成されたメタンの内,約98%が処理水中に溶存してしまい,回収できるメタン量は僅か2%にすぎなかったが,溶存メタン回収DHSを適用することにより,約72%まで向上させることに成功した。しかし,メタンガスを高濃度に回収しようとすると,DHS処理水に溶存メタンが残存してしまうトレードオフの関係が見られた。そこで,溶存メタン回収DHSの後段に溶存メタン除去DHSを設置し,溶存メタンを高濃度のメタンガスとして回収しつつ,回収不可能な溶存メタンを除去することを試みた。その結果,溶存メタンを有用なエネルギー源 (回収メタンガス濃度30%以上) となるよう回収しつつ,溶存メタンの大気放散を97%以上削減させることに成功した�

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