山谷 幹樹

河道内樹木管理支援のための多時期航空写真画像等による土地被覆履歴の把握

力丸 厚 , 高橋 一義

河道内樹木とは、堤外地に生育している樹木のことを言い、それが密生すると、河川管理上様々な問題の原因となる。そのため、河道内樹木管理が必要となり、伐採等の前に現地調査が行われている。しかし近年は、密生した樹木が河道内に散在しており、作業員による現地調査だけでは河道内の植生状態を把握しきれなくなった。したがって、河道内の植生状態の面的定量的な調査が必要とされている。本論文では、7時期の航空写真画像と地上レーザースキャナーデータを用いて、河道内の植生状態の解析を行い、得られた流下阻害情報による河道内樹木管理支援を目的とした。
対象地区は、信濃川流域内の五辺地区と大田川合流地区である。五辺地区は、高木林が広範囲に繁茂している地区であり、大田川合流地区は、3,4年前に大規模な伐採が行われた地区である。
多時期航空写真を用いて、土地被覆分類を実施し、土地被覆の経年把握と林齢の推定を行った。その結果より、五辺地区の樹林化は、昭和22年以降の耕作放棄から始まり、昭和52年から63年の低水路護岸工事による流路の固定化により進行したと推察した。また、森林履歴の集計から現在の最大林齢は40年〜49年だと推定した。大田川合流地区の樹林化は、昭和58年から昭和62年に建設された導流堤による流路の変化後、昭和63年までに植生が発生し、その後樹林化が進行したと推察した。
地上レーザー計測点から横断図を用いて算出した地盤高を減算し、樹高を推定した。その結果より、最大樹高は五辺地区で25m、大田川合流地区で9mと推定した。また、水位高別のレーザー計測点を用い、点数の集計によって算出した遮蔽率から密生状況を評価した。その結果より、五辺地区の遮蔽率は、水位高1m以下が24%、計画高水位以上が26.4%、その他は3%以下と算出した。また、大田川合流地区の遮蔽率は、水位高3m以下が35%、計画高水位以上が22.8%と算出した。
以上の結果から植生状態を総合的に評価した。五辺地区の地表植生は、高木林による林床照度の低下によって陽樹が減少し、現在は幼樹と林床植生が生育する状態だと推察した。また、大田川合流地区の地表植生は、伐採による林床照度の増加によって陽樹が生長し、現在は草地と低木が混在する状態だと推察した。
多時期航空写真を用いて、土地被覆の経年把握と林齢の推定を行った結果、樹林化は人工的な工事による流路の固定化によって起こったことがわかった。また、最大林齢の把握から樹林帯の倒木の危険性が把握できる可能性が示唆された。地上レーザースキャナーを用いて、樹高及び密生状況を推定した結果、伐採数年後も流下の阻害状態にあり、樹高が高いからといって一概には流下の阻害状態が高いとは言えない可能性が示唆された。

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