武藤 貴士

スギ林撮影画像による花粉対策用の着花雄花自動抽出手法の研究

力丸厚 高橋一義

近年、スギ花粉症は国民病といわれ、春先のマスクの着用は社会現象にもなっている。この花粉の飛散量予測は現在、スギ雄花着生状況調査(以下従来調査)という黄色のスギ雄花を目視調査する方法で情報発信されている。しかし、目視調査のため調査員の主観的判断や、スギ林を面でなく点で観測しているといった課題が存在している。  
本研究は、広域観測可能なデジタル画像からのスギ雄花領域の自動抽出を行うことを目的とし、従来調査よりも定量的で精度の高いスギ花粉量飛散予測手法の開発をおこなった。解析に葉の色の異なる2つのスギの撮影画像を用いた。スギ雄花領域抽出手法を精密法と簡便法の2つを考案した。精密法では、まずスギ近接画像の解析から、雄花抽出の際に考慮するスギ林構成要素を、黄色雄花、赤色雄花、葉の3つに定めた。解析範囲におけるRed、Green、Blue(以下R、G、B)の3次元空間の中で、ユークリッド距離による構成要素の設定値に最も近い距離にある画素探索を行う。その探索した3点からR、G、B空間の中で黄色特徴領域を抽出する。抽出した黄色特徴領域から色相を用いた雄花判別を行う。
簡便法は精密法より少ないパラメータで雄花抽出を行う目的で開発した手法である。R、G、B信号を表色系であるIntensity(明度)やHue(色相)に変換する。更に、スギ雄花の特徴色である黄色に着目した黄色強調画像を作成し、黄色強調指標、Intensity画像、Hue画像、それぞれの閾値から雄花候補を抽出し、それを統合し雄花領域の抽出を行う手法である。開発した2手法での抽出結果の比較を行い、精密法から抽出した結果を従来調査の専門家に検証して頂いた。また抽出結果の精度検証を行った。地上画像から画像分解能を変化させた画像で、地上調査への実利用性を検討した。航空デジタル画像への可能性の事例としては、航空デジタル画像と地上デジタル画像で対応するスギを選定し、精密法での雄花領域抽出を行った。両画像での抽出結果から、局所領域内における解析範囲内の抽出結果の比較を行った。
結果、精密法は色状態の違う2種類のスギで安定して雄花領域を抽出することができた。簡便法は葉の色状態が緑のスギに対して雄花抽出を行うことができた、しかし、葉の色状態が赤色のスギに対しては誤抽出があった。本研究の結果から、今後精密法の地上調査での実利用の可能性が示唆される。

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